2015 Fiscal Year Research-status Report
硫黄の酸化還元微生物を利用したバイオ発電システムの構築
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26850177
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山下 恭広 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門 畜産環境研究領域, 主任研究員 (60547719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物発電 / ステンレス / アノード / 固体状電子受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物燃料電池は、微生物による有機物の酸化によって電気エネルギーを直接生産できるだけでなく、廃水の浄化や余剰汚泥の削減にも寄与すると考えられていることから今後の新技術として期待されている。しかしながら、この微生物燃料電池の中心的役割を担う電気産生菌の群集生態や反応機構は不明な点が多い。微生物燃料電池内の電子伝達における中間体は、ナノワイヤー、リボフラビン、シトクロム、キノン、水素など、様々な物質が寄与していると推定されており、硫化水素もその1つと考えられている。また、硫酸塩還元細菌の中には電気産生菌としてDesulfobulbus spp.が報告されている。したがって、硫黄代謝に関わる細菌は微生物燃料電池の中で何らかの役割を果たしていると考えられるが、その詳細は全く解明されていない。硫黄は、酸化鉄や微生物燃料電池のアノード(負極)と同様に嫌気性での有機物分解における不溶性の電子受容体である。したがって、硫黄、酸化鉄、アノードを還元する(電子を渡す)活性を持つ細菌群には何らかの共通したメカニズムがあると推測される。微生物燃料電池の実用化には出力の向上が必須である。そこで本年度は様々な酸化金属からなるアノードを網羅的に検索して、出力を向上させるアノードを検討した。さらにそのアノード上に形成されるバイオフィルムの菌叢を解析して硫黄代謝に関与する細菌群を解析した。様々な金属を検討したところステンレス鋼を炎で酸化させた電極は既存の電極よりも高い発電を示すことを発見した。炎酸化ステンレス鋼アノード上のバイオフィルムを16S rRNA遺伝子を用いて解析したところ、硫黄代謝に関与するDesulfuromonadalesやDesulfobacteraceae、Desulfotomaculumに属する細菌が多く検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎酸化ステンレス鋼アノードが高い発電を示すことを発見するとともに、バイオフィル内に存在する硫黄代謝細菌群を特定できたことから、本年度は、研究はおおむね順調に進展したと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
硫黄代謝に関与するDesulfuromonadalesやDesulfobacteraceae、Desulfotomaculumに属す細菌が検出された。今後は、バイオフィルム内の菌叢をQIIMEなどの専用の解析ソフトを用いてより詳細に種レベルで解析する。
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Causes of Carryover |
繰越金は、研究資材を自作する等の工夫により研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題の推進のため、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費、旅費等に使用する。
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