2014 Fiscal Year Research-status Report
全てのHA亜型のインフルエンザウイルスHA蛋白質を中和するユニバーサル抗体の作出
Project/Area Number |
26850180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村本 裕紀子 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (70436567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、全てのA型インフルエンザウイルスに有効な治療法の開発を目指して、全ての亜型のA型インフルエンザウイルスHA蛋白質を中和するユニバーサル抗体を多数作出することを目的とする。 HAは、血清型の違いにより、H1からH18までのHA亜型に分類される。HAはI型の膜蛋白質であり、細胞外領域は球状のhead領域と棒状のstalk領域からなる。HAはインフルエンザウイルスに対する液性免疫の主要ターゲットであり、インフルエンザウイルスの感染またはワクチン接種により、主にHAのhead領域に対する抗体が作られる。HAは免疫システムから逃れるために変異を重ねた結果、その抗原性が変化する。この血清型の違いおよび抗原性の変化がHAをターゲットとした医薬品開発の障害となっている。 これまでに、複数の亜型のHAを中和するモノクローナル抗体が、ワクチン接種したヒトのメモリーB細胞・形質細胞や免疫したマウスから(わずかではあるが)分離されている。これらはHA亜型間で高度に保存されているHAのstalk領域を認識していた。さらに、全てのHA亜型(H1-H16)のstalk領域を認識し、調べた全てのHAを中和するモノクローナル抗体が1クローン分離された。これらの報告は、全HA亜型間で高度に保存されているHAstalkの免疫により、全亜型を認識し中和するモノクローナル抗体の作出が可能であることを示している。 そこで本研究では、HA亜型間で高度に保存されたHAstalkを免疫し、全てのHA亜型のインフルエンザウイルスHA蛋白質を中和するユニバーサル抗体を多数作出する計画である。抗体が標的とするのは、全亜型のHAでの保存領域、つまりHA機能の必須領域であるため、耐性ウイルスの出現は少ないことが予想され、インフルエンザの新たな治療法の開発につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、HA亜型間で高度に保存されたHAstalkを免疫し、全てのHA亜型のインフルエンザウイルスHA蛋白質を中和するユニバーサル抗体を多数作出する計画である。その際のHAstalk領域に対するモノクローナル抗体作製の免疫抗原として、表面にHAstalkを持つHIV Gagウイルス様粒子を使用する計画である。今年度は、免疫抗原について検討した。H1亜型のA/Puerto Rico/8/34 (PR8)(H1N1)およびH3亜型のA/Hong Kong/1/68 (H3N2)のHAからhead領域をさまざまな長さで欠損させたHAstalk領域の発現プラスミドを作製した。それらプラスミドを細胞にトランスフェクションし、発現するstalk蛋白質量を比較した。またHIV Gag発現プラスミドとともにトランスフェクションし、上清に放出されたstalk蛋白質量を比較し、条件検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
プラスミドのトランスフェクションにより培養上清に放出されたHAstalkを持つHIV Gagウイルス様粒子を、シクロースを用いたウイルス/VLP精製法にいより精製する。マウスに免疫し、抗体産生ハイブリドーマ法を作出する。抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには、HAstalkを持つHIV Gagウイルス様粒子を抗原としたELISAと、HAを全く持たないGagウイルス様粒子を抗原としたELISAを組み合わせ、HAstalkのみを認識する抗体を選別する。その後、免疫抗原とは異なるH5亜型およびH7亜型の精製インフルエンザウイルスまたは精製HA蛋白質を抗原としたELISAにより、さまざまなHA亜型を認識する抗体を選別する計画である。
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Causes of Carryover |
次年度行う予定である、ハイブリドーマの培養、ELISAによる抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング等には消耗品を非常に多く使用する計画であるため、次年度に使用する必要性が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には抗体産生ハイブリドーマ法を作出する計画である。抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには、さまざまなELISAを行う計画であり、そのためには、細胞培養液類、プラスチック器具、抗体類、試薬類など非常に多くの消耗品を使用する計画である。
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[Journal Article] An ultrasensitive mechanism regulates influenza virus-induced inflammation2015
Author(s)
Shoemaker JE, Fukuyama S, Eisfeld AJ, Zhao D, Kawakami E, Sakabe S, Maemura T, Gorai T, Katsura H, Muramoto Y, Watanabe S, Watanabe T,,Fuji K, Matsuoka Y, Kitano H, Kawaoka Y.
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Journal Title
PLoS Pathog.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Disease severity is associated with differential gene expression at the early and late phases of infection in nonhuman primates infected with different H5N1 highly pathogenic avian influenza viruses.2014
Author(s)
Muramoto Y, Shoemaker JE, Le MQ, Itoh Y, Tamura D, Sakai-Tagawa Y, Imai H, Uraki R, Takano R, Kawakami E, Ito M, Okamoto K, Ishigaki H, Mimuro H, Sasakawa C, Matsuoka Y, Noda T, Fukuyama S, Ogasawara K, Kitano H, Kawaoka Y.
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Journal Title
J Virol.
Volume: 88
Pages: 8981-8997
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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