2015 Fiscal Year Annual Research Report
慢性肝疾患における鉄代謝障害の炎症性機序と病理学的役割の解明
Project/Area Number |
26850184
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20580369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性肝疾患 / 鉄過剰 / 炎症 / マクロファージ / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性肝疾患は肝硬変・肝癌へと進展する難治性疾患であり,その進展機序の解明は重要である.慢性肝疾患において,鉄代謝障害(鉄過剰)は病態悪化につながるリスクファクターと考えられているが,そのメカニズムには不明点が多い.本研究では,慢性肝疾患の病態進展に関わる鉄過剰の役割に注目して,2種の慢性肝疾患モデルラットを用いて解析した.本年度の実績は以下の通りである.
1.チオアセトアミド(TAA)誘発肝硬変モデルラットでは,肝硬変の進展期に肝細胞に鉄蓄積が認められ,この細胞ではTUNEL陽性アポトーシスの減少およびBrdU陽性細胞増殖の減少傾向がみられた.さらに,TAA投与ラットに鉄過剰食を投与したところ,TAA誘発肝硬変の進展期において,肉眼的および病理組織学的に肝臓の線維化は顕著に抑制され,マクロファージ,T細胞およびNK細胞などの炎症細胞浸潤も抑制された.以上より,TAA誘発肝硬変モデルにおいて,鉄過剰は肝病変の抑制に関わる可能性が示された.
2.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルラットでは,鉄過剰食の投与により,マクロファージに鉄沈着が強く認められた.また,肝実質内の炎症巣数は増加し,血清中の肝酵素値(ALT, 総ビリルビン)も上昇傾向を示した.さらに,肝病変部における炎症性サイトカイン(TNF-α, IFN-γ, IL-1β, TGF-β)の遺伝子発現の上昇傾向がみられた.以上より,NASHモデルにおいて,鉄過剰は炎症の進展を介して,肝病変の増悪に関わる可能性が示された.
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