2015 Fiscal Year Research-status Report
犬の炎症性結直腸ポリープの病態解析:Toll様受容体の機能異常と免疫寛容の破綻
Project/Area Number |
26850191
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大田 寛 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (50431333)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | Toll様受容体 / in situ hybridization / 細菌抗原 / 炎症性サイトカイン / 腸粘膜バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、犬の炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部におけるToll様受容体(TLR)2および4のmRNAの発現部位をin situ hybridization法にて解析し、結腸粘膜上皮細胞ならびに炎症細胞にてその発現を確認した。また、TLR2およびTLR4のmRNAの発現量を健常な犬の結腸と比較したところ、TLR4の発現が優位に増加していることが明らかとなった。この事から、炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部においては、浸潤した炎症細胞のみでなく、粘膜上皮細胞においてもTLR4の発現が上昇していることが明らかとなり、粘膜上皮細胞に過剰に発現したTLR4が炎症性結直腸ポリープの病態形成に関与していることが示唆された。この仮説の検証のために、炎症性結直腸ポリープ症例の内視鏡下粘膜生検組織を培養し、様々な細菌抗原で刺激を行った。現在、細菌抗原による刺激後の培養粘膜組織における炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8, IL-1b)の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析中である。 加えて、炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部における腸粘膜バリアの解析を目的として、ポリープ病変部における細胞接着因子(クローディン分子群)の発現解析を免疫組織化学的手法を用いて行った。クローディン-1, -2, -3, -4, -5, -7, -8の発現解析を行ったところ、正常結腸粘膜からポリープ病変部への移行部位にて、クローディン-2の発現の低下を認めた。クローディン-2は上皮細胞間を経由する水分子の動きを制御していることから、結直腸粘膜における水分子の輸送異常がポリープ病変の形成または病態の悪化に関与している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の目的の一つである犬の炎症性結直腸ポリープ症例のポリープ病変部におけるTLR2およびTLR4の局在を明らかにすることが出来た。また、内視鏡下粘膜生検組織を培養し、細菌抗原刺激後のサイトカイン産生の評価も開始できており、機能評価にも着手できている。一方で、他の目標の一つである、犬の結腸粘膜上皮の単離・培養には成功しておらず、次年度の課題として残っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後予定していることとして、犬の結腸粘膜上皮の単離・培養法の確立、それを用いた犬の結腸粘膜上皮に発現するTLR4の機能解析があげられる。結腸粘膜上皮の単離・培養については、マウスおよびヒトでの報告をもとに内視鏡生検腸粘膜を用いて培養を試みる予定である。また、TLR4の機能解析には、これまでに確立した手法(細菌抗原刺激後のサイトカインの遺伝子発現解析)を用いる予定である。
|
Causes of Carryover |
残額で購入予定であった抗COX2抗体の国内在庫不足のため平成27年度での購入が出来なかった。よって、抗COX2抗体購入分の経費を平成28年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の様に、繰り越した経費を抗COX2抗体の購入にあてる予定である。
|
Research Products
(2 results)