2014 Fiscal Year Research-status Report
犬の骨髄中脂肪細胞に付着する新規間葉系幹細胞の性状解析と再生医療への有用性の検討
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26850192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 直己 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10554488)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 骨髄 / 脂肪細胞 / 肝細胞成長因子(HGF) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、まず、BM-PACとBMMSCのpopulation比較を行った。表面抗原解析ではCD29,44,73,90,105(間葉系細胞マーカー)およびCD34,45(造血幹細胞マーカー)について解析した結果、CD73の陽性率において、BM-PACはBMMSCより有意に高い発現を示した。その他のマーカー発現に差はみられなかった。次に、脂肪、骨、軟骨への多分化能比較を行った。BM-PACはBMMSCと比較し、それぞれの評価方法(Oil Red O,Alizarin Red S,Tluidine Blue染色)に対し、より強く染色される傾向にあり、多分化能においてもBMMSCより優れていると示唆された。我々はすでに増殖能力においてBMMSCよりBM-PACが優れていることを明らかにしており、以上の結果から、BM-PACはBMMSCより優れた間葉系幹細胞であると考えられ、BMMSCとは異なる細胞集団を含んでいることが明らかとなった。BM-PACの再生医療への有用性をさらに検討するため、強い組織再生能力が報告されている幹細胞増殖因子(HGF)の発現について、さらに比較検討を行ったところ、タンパクレベルでのHGF発現はBMMSCよりBM-PACで有意に高かった。そこで、BM-PACにおいて、炎症性サイトカインに対するHGF産生の反応性をみたところ、主要な炎症性サイトカインであるTNF-αの存在下で、HGFの遺伝子発現が上昇することを見出した。すなわち、BM-PACは炎症存在下において、組織修復能力をもつHGFを産生し、組織再生に寄与する可能性が示唆された。今後、ELISAを用いて、HGFの分泌能力を検証するとともに、HGFの有効性が報告されている脊髄損傷をターゲットとし、再生医療への応用を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、多分化能においては各種分化マーカーを用いた定量評価を用いる予定であったが、犬HGF測定のELISAが高額であったため断念し、ELISA kitの購入に予算を割り当てた。次年度は予定通りin vivoでの実験に移る予定であるため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HGFは様々な生理活性を持ち、再生医療においては組織修復に寄与する生理活性物質の鍵ともなる物質である。当初は、脊髄再生に対し、BM-PACの神経細胞分化を検討する予定であったが、HGFの十分な発現と炎症性サイトカインへの反応性に期待し、液性因子を介した脊髄再生医療への利用を検討し、BM-PACが産生するHGFの機能と組織再生における役割を中心とした解析で脊髄再生への応用性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに使用した結果、少額ではあるが次年度への繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度へ繰り越し、物品費として使用する。
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