2015 Fiscal Year Research-status Report
犬の骨髄中脂肪細胞に付着する新規間葉系幹細胞の性状解析と再生医療への有用性の検討
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26850192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 直己 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10554488)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 再生医療 / 骨髄間葉系幹細胞 / 肝細胞成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、犬の骨髄中脂肪細胞に付着する新規間葉系幹細胞を見出し、骨髄脂肪細胞周囲細胞Bone Marro Peri-Adipocyte Cells(BM-PACs)と命名した。また、BM-PACsが主要な炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-6存在下で様々な組織の再生に寄与しているとされる肝細胞成長因子(HGF)を大量に産生・分泌することをELISAにて明らかにしていた。今年度は、同じ骨髄由来の細胞を材料として培養される、従来骨髄間葉系幹細胞とされてきた細胞と、これらのサイトカインに対するHGF発現変化を比較したところ、BM-PACは骨髄間葉系幹細胞と比較し、遺伝子レベルでHGF発現が有意に上昇し、炎症存在下でのHGF合成・分泌能に優れていることが示唆された。さらに、本年度はHGFにより細胞運動能の亢進がみられることが知られている犬腎臓上皮細胞株(MDCK細胞)を用い、BM-PACが分泌するHGFが生理活性を持つかを検討した。TNF-α刺激後の細胞培養上清による馴化培地でMDCKを培養したところ、HGFの受容体であるC-Metのリン酸化がおこり、MDCK細胞コロニーのScatteringが認められた。また、c-Met下流経路であるERKのリン酸化を確認した。この事から、BM-PACから分泌されるc-Metは生理活性をもつことが明らかとなり、炎症部位に存在させられれば、HGFの合成・分泌を介した組織修復が期待できる科学的根拠を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、BM-PACの神経細胞分化能を検討し、神経再生の細胞材料として応用可能かを解析する予定であったが、前年度までの結果で、BM-PACがHGF産生細胞として組織修復に大きく貢献できる可能性があったため、当初の予定を変更し、栄養因子を介した組織再生修復に着目して研究を進めた。昨年度までELISAによる評価に留まっていたが、今年度の結果から、BM-PACは実際に生理活性作用を持つHGFを産生し、組織修復に貢献できることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
HGFによる組織修復は様々な組織で再生医療に利用されうるが、今年度は特に犬で十分な治療法が確立されていない脊髄損傷を対象としてBM-PACを用いた脊髄再生治療の前臨床研究を進める。具体的には、脊髄損傷モデルを免疫抑制マウス(ヌードあるいはSCID)で作製し、投与後の細胞挙動を観察し、損傷部への到達可能な投与経路、投与時期を検討する。損傷部への到達が明らかになった場合、治療効果を行動学的・病理組織学的に評価し、それらにおけるHGFの役割を検討する。
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Research Products
(2 results)