2014 Fiscal Year Research-status Report
蛋白凝固剤トランスグルタミナーゼのグリア細胞機能調節因子としての可能性
Project/Area Number |
26850209
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (50453139)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリア細胞 / トランスグルタミナーゼ / アストロサイト / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の架橋結合形成酵素であるトランスグルタミナーゼには1~7までと血液凝固第13因子の8種類の存在が知られている。中でも、全身に広く発現するトランスグルタミナーゼ2は、神経変性疾患に特徴的な凝集体の形成に関与する可能性が指摘されており、中枢神経系での重要性が検討されている。本研究では、脳機能の維持に重要なグリア細胞におけるトランスグルタミナーゼの発現と細胞機能との関係について解析した。 マウスミクログリアの細胞株であるBV-2細胞に、リポポリサッカライド(LPS)を添加して活性化させると、トランスグルタミナーゼ2のmRNA・蛋白質発現が上昇し、トランスグルタミナーゼの酵素活性も上昇した。この時、LPS刺激によって誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現が上昇しNO産生が増加した。また、BV-2細胞の貪食能を蛍光マイクロビーズの取り込みで評価したところ、LPSによってビーズ取り込み能が上昇した。さらに、ヒト神経芽細胞腫の細胞株であるSH-SY5Y細胞に過酸化水素を添加することによって細胞死を誘導し、作製した死細胞をBV-2細胞に取り込ませた場合においても、LPS刺激による貪食能の上昇が認められた。 LPSによって増加したトランスグルタミナーゼ2の発現は、転写因子NF-kappaBの阻害剤により抑制されたことから、NF-kappaBによって発現調節されていると考えられる。また、LPS刺激によるNO産生の増加と貪食能の上昇も、NF-kappaB阻害剤によって抑制された。 LPSによって活性化したBV-2細胞のNO産生と貪食能は、トランスグルタミナーゼの活性阻害剤であるシスタミンを同時に添加しておくことによって抑制された。したがって、ミクログリアの重要な機能である一酸化窒素産生と異物貪食には、トランスグルタミナーゼが寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞の培養に必要な血清を研究期間の途中で新規購入した際、細胞の活性化状態などが血清によって変化するため、最適な実験条件を検討し、実験結果の再現性を得るのに時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、グリア細胞におけるトランスグルタミナーゼの発現変化およびトランスグルタミナーゼ阻害剤によるグリア細胞の機能変化についての解析は着実に進行している。神経変性疾患に特徴的な凝集体形成への寄与や疾患モデル動物での検討を、平成27年度研究実施計画の通りに遂行する予定である。疾患モデル動物における解析について、複数のモデルを検討するのが不可能な場合は、疾患モデル数を絞ることとし、また、研究室に所属する複数の学生や院生と協力することにより、同時並行で実験を遂行し、研究計画を推進する。
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Causes of Carryover |
成果発表した学会の一部を自費払いで参加したため、および細胞培養に使用する最適な血清の単価が予想よりも安かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の直接経費と合わせて、実験用動物および試薬の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)