2014 Fiscal Year Research-status Report
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26850215
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
金児 雄 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (90633610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 変態 / ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の蛹変態は、幼若ホルモンが消失することで引き金が引かれる。その後エクダイソンをはじめとするホルモンに対して各組織がそれぞれ異なる応答(再構成、新生、細胞死など)をすることで、個体の蛹への変態が完了する。しかし開放血管系である昆虫において、体液中に均一に拡散しているホルモンが、どのような機構で異なる組織に異なる作用を引き起こすのかは不明である。このホルモンによる組織特異的な変態誘導機構を分子レベルで解明することが本申請研究の目的である。そこで各体節に存在し、かつ蛹変態時に体節特異的に細胞死が誘導されるベルソン氏腺を用いてこの命題に取り組んだ。 まず体節特異的に発現する遺伝子を調べるために、既に行っていたマイクロアレイに加えて、細胞死を起こす体節と起こさない体節との間でRNAシークエンスを行い、候補遺伝子の探索を行った。現在得られた候補遺伝子のうち約40遺伝子についてreal time PCRによって体節特異性を確認した結果、すべての遺伝子において体節特異的な発現が確認できた。これらの遺伝子に対して、ホルモンの応答性をin vivoにおいて検証した結果、細胞死を起こす体節と起こさない体節のそれぞれにおいて、ホルモンによって発現が誘導される遺伝子と抑制される遺伝子を単離することが出来た。このうち2つの遺伝子に対してRNAiによるノックダウンを行ったところ、弱いながら細胞死への影響が見られた。今後in vitroでの検証を行うために培養系の開発も始めた。現在短期の培養系が確立出来たので、この系を用いて候補遺伝子のホルモンに対する応答の検証を始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、体節特異的にホルモンへ応答する遺伝子の探索をすることを目標として行っていた。これまで体節特異性を生み出す候補遺伝子を複数見いだし、さらにホルモンの塗布実験により、発現がホルモンに依存している遺伝子を見いだすことができたことから、申請研究は順調に進行している。さらにこれらの遺伝子のノックダウンも順次行っており、体節特異性へ影響を与える遺伝子も見いだしている。更にこれらの遺伝子のノックダウンによりホルモン応答性への影響も観察されており、この結果は次年度に目標としていたことであり、計画が順調に進行していることを物語っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)体節特異的な細胞死誘導遺伝子間の相互作用の解明 候補遺伝子の絞り込みを引き続き行うと共に、遺伝子間の相互作用の解明に着手する。具体的には、ひとつの遺伝子を過剰発現もしくはRNAiによりノックダウンし、他の遺伝子の発現が抑制または促進されるかを調べることで遺伝子間の相互作用を検証する。さらにベルソン氏腺の細胞死はオートファジーを伴うことから、既知のオートファジー関連遺伝子への影響も確認する。これを得られた全ての体節特異的遺伝子に対して行い、最終的に全ての情報から体節特異的細胞死に関わるシグナル系を構築する。 2)ホルモン受容体の体節特異性への関与の検証 ホルモンシグナリングの一部は、近年同定された核内受容体が介在すると考えられている。そこで体節特異的にホルモンに応答する遺伝子は、直接または間接的に核内受容体に制御される可能性が考えられる。特にカイコには2つの核内受容体遺伝子のisoformが知られており、発現するisoformの違いが体節特異的なホルモン応答に関与している可能性がある。まず核内受容体遺伝子の発現量および発現変動パターンを、細胞死を起こす体節と起こさない体節のベルソン氏腺で比較することで、ホルモンを介した制御を受けているかを推定する。次いで核内受容体が細胞死の抑制に関与するかを、核内受容体遺伝子をRNAiによりノックダウンし細胞死の抑制に対して影響を及ぼすかどうかで検証するとともに、体節特異的遺伝子の挙動が変化するかも同時に調べる。これらの実験により、体節特異的な細胞死への核内受容体の影響を分子レベルで検証できる。
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