2014 Fiscal Year Research-status Report
神経活動依存的な遺伝子発現を利用した昆虫の性フェロモン神経回路の可視化と機能解析
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26850218
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木矢 剛智 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (90532309)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カイコ / ショウジョウバエ / 性行動 / フェロモン / fruitless / Hr38 / 神経活動 / 初期応答遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本研究者が新規に同定した神経活動依存的発現を示す遺伝子Hr38を利用して、神経回路の可視化と操作を行うことで、外界からの感覚情報が行動を制御する神経機構の一端を明らかにすることにある。特に性フェロモンと性行動をモデル系とすることで、感覚入力依存的な行動制御の神経機構に迫ることを目指している。 ①カイコガをモデルとした研究 これまでにカイコガを用い、Hr38発現依存的な遺伝子発現制御法を構築してきた(NBREシステム)。本方法を用い、神経活動依存的に十分な転写活性を持つ遺伝子組換えカイコガ系統の作出に取り組んだ。26年度初めには、p65やVP16(強力な転写活性化ドメイン)を融合したGAL4を発現するカイコガを作出したが、ほぼすべての系統で致死となってしまい、系統の樹立が出来なかった。これはおそらくGAL4の細胞毒性が出たためと考えられる。次に、p10Tなどの翻訳エンハンサーを組み込んだベクターでGAL4を発現させる系統を作出したところ、非常に大きな発現量増加が認められた。現在、性フェロモン依存的にGFPを発現した神経回路の可視化を行い、細胞の投射パターンを丁寧に解析しているところである。 ②ショウジョウバエをモデルとした研究 ショウジョウバエではHr38転写開始点にGAL4が挿入された系統が確立できていたので、これを利用した神経回路の可視化法の確立を完了した。性行動に伴ってGFPが発現する細胞の詳細かつ網羅的な同定を行った。これらの細胞の多くは性決定遺伝子であるfruitlessと共発現することを見出した。現在、fruitless陽性細胞のなかでも性行動に伴って活動する神経細胞の機能解析を開始したところである。 これらの研究を通して、昆虫で初めての、有用な神経回路マッピング法を完成させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、カイコガにおいては目的のGAL4系統の確立に成功し、ショウジョウバエにおいては活動依存的な神経回路可視化法の確立に成功しているので、おおむね計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
①カイコガ 今後は、活動依存的にラベルされた神経細胞の詳細な解析を行う。さらにはこれらの細胞にGCaMPやdTrpA1やTeTxLCを発現させることで、機能の詳細を調べる。 ②ショウジョウバエ 活動依存的にラベルされた細胞が性行動に果たす役割の機能解析を行う。
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