2015 Fiscal Year Research-status Report
異なる情報を利用するミツバチの予測的採餌行動の研究
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26850219
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
原野 健一 玉川大学, 学術研究所, 准教授 (80459297)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 採餌戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、花粉と糖液を同時に採餌させる餌場の作成を試みたが、蜂はどちらか一方を採餌する傾向が強く、目的とするような餌場の作成には至らなかった。そこで、花蜜と花粉の両方を提供する自然の餌場(サクラ「陽光」)を利用して、研究を遂行した。その結果、花粉採餌蜂は、花が分泌している花蜜よりも明らかに高濃度の蜜を持って到着していることを明らかにした。この高濃度の蜜は、花粉団子作成用のつなぎ蜜であると考えられ、少なくともこの花の場合、花粉採餌蜂は、餌場で蜜が利用できる場合でも、巣からつなぎ蜜を持ち出すことが示唆された。 また、2014年に得られたデータを詳しく解析することにより、出巣時積載蜜の濃度が目的とする採餌物(花蜜あるいは花粉)と餌場の距離に応じて調節されていることを発見した。花粉採餌蜂は、花蜜採餌蜂よりも高濃度の蜜を持って出巣しており、どちらのタイプの採餌蜂であっても、餌場までの距離が長いほど高濃度の蜜を持っていた(Harano & Nakamura, 2016)。この結果は、採餌蜂が蜜の量だけでなく、その濃度も調節することで、必要に見合った量の糖を燃料として巣から持ち出していることを示している。濃度による調節は、特定の濃度の蜜を選択的に積載すれば可能であるが、濃度のわずかな違いを検出する必要があり、量の調節で働いているのとは異なるしくみが関与していることが示唆された。また、燃料として利用する蜜の濃度によって量を調節し、一定のエネルギー量を確保する調節の存在も示唆された。このような調節は、研究費申請時には予想していなかったものであり、本研究で初めて明らかになった燃料調節の新たな様式である。 加えて、本研究課題に取り組む中で、オスが働き蜂よりも高濃度の燃料を利用していることにも気づき、これが繁殖機会を高めるためのオスの戦略であることを示した(Hayashi et al. submitted)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
花蜜も提供する餌場で採餌する際の花粉採餌蜂の出巣時積載蜜の調節については、計画通り進めることができた。それに加え、濃度による調節というこれまで予想されていなかった調節様式を発見し、オスの燃料調節についても明らかにすることができた。予定していた花粉のまとめやすさがつなぎ蜜量におよぼす影響についての実験は、蜜濃度の解析とオスの出巣時積載蜜の実験に時間を費やしたため、実行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究によって、出巣時積載蜜はその濃度も調節されていることが明らかになった。これは、これまで知られていなかった調節様式であり、この調節の詳細を究明することで新規性の高い研究成果を期待できる。そこで、計画を変更し、花粉採餌蜂が高濃度の蜜を持って出巣することの意義を明らかにする実験を行なう。低濃度糖液の給餌によって出巣時積載蜜の濃度を低下させられることを利用し、花蜜採餌蜂は花粉団子を作成するために粘度の高い高濃度の花蜜を必要とするという仮説を検証する。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際学会(3rd Global Conference of Entomology)が大会日程を直前に変更したために、この大会に参加できず、旅費を使用しなかったため。 前年度に購入した実験用蜂群が予想以上によく越冬し、新たな群の購入が不要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第25回国際昆虫学会大会(International Conference of Entomology)に参加するための旅費として使用する。残額は新たに必要になった電子天秤の購入費の一部に充てる。
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