2016 Fiscal Year Research-status Report
カイコ卵色変異系体の解析による昆虫の新規色素合成経路の解明
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26850220
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
二橋 美瑞子 (長内美瑞子) 茨城大学, 理学部, 准教授 (00422402)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆虫 / 色素 / オモクローム / カイコ |
Outline of Annual Research Achievements |
オモクローム色素は、様々な昆虫で赤・紫・茶などの体色を生み出し、複眼の遮蔽色素としても広く分布している、昆虫の主要な色素である。これまで生化学やショウジョウバエの遺伝学の研究がおこなわれてきたが、特に色素合成の後半部分に関するメカニズムはほとんど未解明なままであった。本研究では、カイコの4種類の劣性の卵色変異体の解析を通じて、オモクローム色素の生合成経路の後半のブラックボックスの解明を目指す。 カイコの卵色変異体pe (pink eyed white egg, 淡赤眼白卵)については、昨年度までに原因遺伝子の同定に成功し、筆頭および責任著者として原著論文をHeredity誌にて発表を行っている。また、2種類の独立の褐卵変異体b-4(第四褐卵)、b-t(辻田褐卵)については、これまでに次世代シーケンサーを利用した連鎖解析ddRAD-seqによって責任領域を絞り込んでいる。着色時期の卵と卵巣におけるトランスクリプトーム解析より、b-4、b-tについて変異体特異的な非同義置換を持つ遺伝子が検出された。このうち3つの遺伝子についてTALENによる遺伝子ノックアウト個体の作出を行ったが、現在までに褐卵変異体と同様の表現型を示すものが出現していないことから、原因遺伝子は他に存在することが示唆された。一方で、b-4変異体の表現型の観察と色素の解析を行ったところ、予想外に、複眼では野生型との間で色および色素に差を見出すことはできなかったが、神経節においては、顕著に着色が抑制され、色素量も少ないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褐色卵変異体の原因遺伝子候補について作出した遺伝子ノックアウト個体が結果的には変異体と同じ表現型を示さなかったが、予想外の結果として、b-4変異体では複眼の着色が野生型と変わらないが、神経節の着色が顕著に薄いことを見出した。また、b-4変異体と野生型カイコの卵と神経節の色素を予備的に比較した結果、色素の量に顕著な違いがみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子候補を増やすために、2017年4月に更新されたカイコゲノム情報を用いて絞り込み領域内で発現パターンまた塩基配列に違いのある遺伝子の探索を行う。また、原因遺伝子を決定するには機能解析を行う遺伝子数を増やす必要があるが、TALENによる遺伝子ノックアウトは、卵への微量注入のステップで熟練した技術と専用の機材を必要とするため、機能解析の律速となっていた。そこで、より簡便にオモクローム合成遺伝子の機能解析を行える実験系を立ち上げる。卵と同様の色素をヒフに持つと報告されている系統において、ポジティヴコントロールとなるcardinal遺伝子のRNAiによって皮膚の着色が変化するかを調べたのちに、原因遺伝子候補についてRNAiを行い、これまでより大きな規模で原因遺伝子のスクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
研究対象であるカイコの褐卵変異体の候補遺伝子の追加スクリーニングが必要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
褐卵変異体の候補遺伝子の追加スクリーニング実験に必要な、カイコの人工飼料や消耗品類、二本鎖RNA等を購入する。
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Research Products
(4 results)