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2014 Fiscal Year Research-status Report

作物体に共生する脱窒菌からの好気的N2O発生メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 26850225
Research InstitutionNational Institute for Agro-Environmental Sciences

Principal Investigator

多胡 香奈子  独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20432198)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2016-03-31
Keywords窒素循環 / 環境微生物学 / 一酸化二窒素
Outline of Annual Research Achievements

地球温暖化ガスの1つである一酸化二窒素(N2O)は施肥や降雨時に土壌から発生するだけでなく葉菜類の作物体やその残さからも発生することがある。しかし申請者らはN2Oが土壌でなく作物体(キャベツ)が腐敗するのに伴い葉から直接発生することを突き止め、そこから好気環境で脱窒を行う細菌を分離した。本課題では葉でのN2O発生がどういった脱窒経路に起因しているのか解明し、窒素循環における葉面微生物の寄与を示すことを目的として研究を開始した。
作物体から脱窒菌を約60株分離した。それらを16S rRNA遺伝子配列に基づき分類したところ、5属に分かれた。分離株の中から8株を用いて脱窒の特徴を調べた。まず分離株の脱窒能と最終生産物(N2OまたはN2)を調べるため、アセチレンブロック法を用いて脱窒活性を測定した。脱窒菌を好気環境で(気相を窒素などの無機ガスで置換せずに)培養したところ、用いた8株は数倍程度の範囲で異なる脱窒活性を示したが、いずれも最終生産物としてN2Oを発生した。また脱窒に関する酸素の影響を調べるため、培養液を異なる速度で撹拌・通気しながらアセチレンブロック法で脱窒活性を測定した。その結果、通気を激しくすると脱窒活性が低下した。次に培養液中の酸素濃度を測定するために、マイクロセンサーを用いた酸素濃度の測定法を確立した。深さ4mmの培養液中で分離株を培養し、脱窒能と酸素濃度を測定した。その結果、静置培養しN2O発生量が多かった培養液では深さ2~3㎜で急激に酸素濃度が低下した。一方、撹拌によりN2O発生が認められなかった培養液では培養液の底面でも酸素が培養液中に含まれていることが分かった。以上から酸素濃度がN2O発生に大きく影響することが分かった。また分離した脱窒菌は好気的に脱窒をすると思われたが、実際には低酸素濃度下で脱窒を行っていることが考えられた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

土壌での脱窒は嫌気環境で脱窒が起こると考えられている。一方で、作物体の葉という酸素に触れる環境での脱窒については不明であった。本年度の研究の結果、脱窒が盛んに行われている培養液では、わずか数㎜の深さで嫌気環境が構築され、そこで脱窒が行われていたことが明らかとなった。このことから、葉での脱窒は作物体に存在する微小な嫌気環境内で起こっていると考えられた。また分離株の脱窒能は既存の土壌由来の脱窒菌よりも高かった。これは作物体に豊富に含まれる基質によるものと考えられた。以上から、作物体からのN2O発生は土壌で起こる場合とは特徴が異なることが示唆された。
一方、本年度の計画では上記の生化学的な実験のほか、作物体のメタボローム解析等も行う予定であった。しかし脱窒菌の分離培養実験を開始した直後は、1つの菌株でも日によって脱窒活性が異なるなど、脱窒活性を正確に把握できなかった。そのため、このようなばらつきをなくすための新たな脱窒活性測定法を確立する必要が生じた。この検討に時間を要したため、メタボローム解析等まで研究を進めることが出来ず、計画は「やや遅れている」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

本年度は分離した脱窒菌の生化学的な特徴を明らかにした。来年度は葉での脱窒に必要な基質を特定するためにメタボローム解析を行う。またメタゲノム解析で分離株が有する脱窒関連遺伝子群を特定する。さらに分離株が脱窒しているときに発現している遺伝子を特定するため、mRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析に供する。こうして窒素代謝が起こっているときの遺伝子の発現状況を把握し、葉での脱窒とN2O 発生がどういった窒素代謝に起因しているのか提示する。
一方で、本年度までに分離した脱窒菌は複数の属に分類された。従って葉では複数種の脱窒菌が作物体由来の脱窒基質に対して競合あるいは協調しながら脱窒が起こっていると考えられる。そこで脱窒菌を混合培養して、培養液をメタボローム解析やトランスクリプトーム解析に供する。これにより微生物間の相互作用と機能(脱窒)に関する知見を得る。

Causes of Carryover

これまで作物体から脱窒菌が分離されたという知見はなかったため、本年度は作物体由来の脱窒菌の培養方法や脱窒活性測定法を確立することから検討することとなった。そのため培養実験に重点をおくこととなり、高額な試薬を用いるDNA・RNAの抽出やメタゲノム解析およびメタボローム解析等を行うことが出来なかった。これにより次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

分子生物学的手法やゲノム解析あるいはメタボローム解析等、申請時には26年度中に行う予定であった計画を27年度に移行して遂行する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Book (1 results)

  • [Book] 環境と微生物の事典2014

    • Author(s)
      多胡香奈子
    • Total Pages
      2
    • Publisher
      朝倉書店

URL: 

Published: 2016-06-01  

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