2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study on challenge of wood burial in Japan
Project/Area Number |
26850227
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 裕文 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (30552343)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 樹木葬 / 森林利用 / 墓地 / 地域づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
日本において持続的森林管理につながる樹木葬墓地を実現するための具体的な制度的・社会的な課題や、地域住民にとってのニースと不安材料を調査し、森林利用型樹木葬墓地を日本に導入するに当たっての具体的な課題を以下の3点に整理した。 (1)森林経営としての収益性:日本国内の自治体や民間霊園が、埋葬の効率性と収益性を求めて、合葬式共同墓の一形態としてのシンボルツリー型の樹木葬墓地を選択していることが明らかになった。このことは、裏を返すと、既存の森林を利用した樹木葬墓地がどの程度の収益性を上げることができるかが不透明であるという問題があるため、新たな形態としての森林利用型樹木葬墓地が導入できていないことを意味している。 (2)低コストで持続的な森林管理方法:新規に求められる墓地では、「永代管理」や「永代供養」といった、墓地の永続的な管理が求められる傾向があることが明らかになった。ま た、人々に好まれる墓地は、自然的でありながらも、安全で安心な人手の加わった半自然空間であり、実際に提供者側も、管理の容易さからできるだけ樹木が少ない、シンボルツリー型の樹木葬墓地を選択する傾向が明らかになった。つまり、管理費を抑えた樹木葬墓地の適正な管理方法が不明であることが森林を利用した樹木葬墓地開設を阻む問題となっている点が明らかになった。 (3)地域的視点での副次的な効果:多くの自治体では、これまでの墓地行政の延長で樹木葬墓地がとらえられており、公営墓地では住民のみを対象として需給バランスが考えられている。一部の自治体では、新規墓地の開設に伴う交流人口の拡大や地域への経済波及効果が期待されているが、その具体的な効果が不透明である点が問題となっている。また、人口流動が進む中、墓じまいブームや永代管理志向といった利用者側の社会的ニーズが、合葬式共同墓の拡大という、樹木葬墓地の都市型化を後押しする要因となっている。
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