2014 Fiscal Year Research-status Report
植物RNAウイルスによるプログラム細胞死抑制機構の解明
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26850231
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小松 健 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60451837)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 全身壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者がこれまで主にPCD誘導機構に関する研究を行ってきたポテックスウイルス属のオオバコモザイクウイルス(plantago asiatica mosaic virus; PlAMV)に加え、系統学的に離れたコモウイルス属のウイルスであるダイコンモザイクウイルス(radish mosaic virus; RaMV)がNicotiana benthamiana(Nb)に引き起こす全身壊死の誘導機構について解析した。感染植物を遺伝子発現や顕微鏡観察により詳細に調べたところ、RaMVがNbに引き起こす全身壊死は、防御関連遺伝子の発現誘導やプログラム細胞死を伴っており、さらに抵抗性反応に重要な役割を果たすSGT1などの宿主因子が壊死誘導に必要であるなど、PlAMVがNbに引き起こす全身壊死と同様の特徴を示した。そこで、RaMVのゲノムRNAにコードされるPCD誘導因子をアグロバクテリウムおよびウイルスベクターを用いた一過的発現系により探索したところ、ヘリカーゼタンパク質がPCD誘導能を持つことがわかった。そこでこのヘリカーゼタンパク質のPCD誘導能をもつ領域を絞り込んだ結果、N末端領域に存在する両親媒性ヘリックスがPCD誘導を担っており、ヘリカーゼ活性に重要とされるGKSモチーフやその周辺領域はPCD誘導には関与しなかった。一方で、PlAMVのNbにおけるPCDを伴う全身壊死は、PlAMVにコードされるヘリカーゼドメインがPCD誘導に関与しているが、一過的発現によりそのPCD誘導領域を絞り込むことがほとんどできず、さらにGKSモチーフへの変異でPCD誘導能が失われた。このことから、PlAMVの場合はヘリカーゼドメインの全体的な構造、さらにはその構造が重要な役割を持つヘリカーゼ活性がPCD誘導に重要である可能性が示唆され、両ウイルスのPCD誘導メカニズムに大きな違いがあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の交付申請書に記載の実験計画通り、2つの系統学的に離れた植物RNAウイルスである、ポテックスウイルスPlAMVとコモウイルスRaMVを用いて、植物RNAウイルスのPCD誘導機構の共通性と多様性を明らかにすることができた。具体的には、RaMVのPCD誘導因子が、既に研究代表者がPlAMVのPCD誘導因子として報告しているものと同様のヘリカーゼタンパク質であることを明らかにした。また、詳細な解析により、RaMVのヘリカーゼによるPCD誘導がN末領域の両親媒性ヘリックスに担われており他の領域を必要としないことから、RaMVのPCD誘導にはヘリカーゼ活性自体は関与しないことを示すことができた。さらに、本研究推進の過程で、共焦点レーザー顕微鏡による詳細な解析により、RaMVによるPCD誘導に宿主の細胞内膜系の変性が強く関わることが示唆されたことも意義深い。 一方で、並行して本年度は、既にPCD誘導能を持つことが示されているPlAMVのヘリカーゼドメインのPCD誘導能のさらなる解析を行った。その結果、本ドメインのPCD誘導能はある限られたアミノ酸配列に絞り込むことができず、またヘリカーゼ活性に重要なGKSモチーフがPCD誘導に重要であることを示しており、RaMVのヘリカーゼによるPCD誘導の特徴と対照的であった。 これらの結果は植物RNAウイルスのPCD誘導機構には植物の反応としては共通な側面が多く見られるものの、ウイルスがPCDを引き起こす初期の段階では異なるメカニズムが働いていることを示唆するもので非常に興味深く新規なアイディアを提供している。このことを示した現在までの成果は、達成度としておおむね順調であると評価できる。一方で、これらの異なるPCD誘導機構を抑えることができるウイルス因子が存在するかどうかに興味が持たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
一過的発現系を用いたPCD抑制因子の探索法は既に確立しており、その探索源となるウイルスは既に揃っていることから、次年度の計画は予定通り遂行できる。一方で、新たなウイルス分離株の発掘も並行して推進しており、本年度も新たに、葉にモザイク病徴を示すハイビスカスより、これまでに知られていた分離株とは全く異なるゲノム構造を持つトバモウイルスを単離した。本ウイルス分離株も含め、次年度に新たに分離したウイルスも試験に用いていく予定である。PlAMVなどいくつかのウイルスについてはそれぞれのタンパク質を一過的に発現させるためのベクターが整備されていることからも、次年度の研究の推進体制は十分である。 また、本年度明らかになったRaMVのPCD誘導における細胞内膜系の変性現象がPlAMVのPCD誘導にも関わるかどうかを調べることで、本現象が研究代表者の注目している感受性のウイルスー植物相互作用におけるPCD誘導の一つの鍵となっている可能性も探っていきたい。宿主細胞内の病変がPCD誘導の可否にどのように結びついているかをミクロなレベルで明らかにすることは、本研究計画の一つの突破点となりうる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Cell Death Triggered by a Putative Amphipathic Helix of Radish mosaic virus Helicase Protein is Tightly Correlated with Host Membrane Modification.2015
Author(s)
Hashimoto M, Komatsu K, Iwai R, Keima T, Maejima K, Shiraishi T, Ishikawa K, Yoshida T, Kitazawa Y, Okano Y, Yamaji Y, Namba S.
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Journal Title
Molecular Plant-Microbe Interactions
Volume: 28
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Complete nucleotide sequence and genome structure of a Japanese isolate of hibiscus latent Fort Pierce virus, a unique tobamovirus that contains an internal poly(A) region in its 3' end.2014
Author(s)
Yoshida T., Kitazawa Y., Komatsu K., Neriya Y., Ishikawa K., Fujita N., Hashimoto M., Maejima K., Yamaji Y., Namba S.
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Journal Title
Archives of Virology
Volume: 159
Pages: 3161-3165
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The phytoplasmal virulence factor TENGU causes plant sterility by downregulating of the jasmonic acid and auxin pathways.2014
Author(s)
Minato N., Himeno M., Hoshi A., Maejima K., Komatsu K., Takebayashi Y., Kasahara H., Yusa A., Yamaji Y., Oshima K., Kamiya Y., Namba S.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 4
Pages: 7399
DOI
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