2015 Fiscal Year Research-status Report
液胞型ATPaseサブユニット間相互作用による機能制御機構の解明
Project/Area Number |
26850234
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
河田 美幸 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (10454498)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 液胞型ATPase / 腸球菌 / 液胞 / ナトリウム輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は前年度に単離した腸球菌V-ATPaseの活性消失変異に対する抑圧変異の解析を中心に行った。腸球菌V-ATPaseNtpKサブユニットのE139D変異は、ナトリウム輸送能が著しく低下した活性消失型変異である。これを抑圧する変異は、輸送イオン認識に関わる変異や、イオン輸送とATP加水分解の共役(回転力の伝達) が変化した変異である可能性が高く、本酵素によるイオン輸送およびエネルギー共役機構の解明に有用なツールとなる。 前年度までに単離したNtpK(E139D)の抑圧変異候補(E50KとV138I)のうち、E50KはE139D変異に対する完全な抑圧変異ではなく、E50Kの単一変異でもV-ATPase活性が低下することが分かった。また、E50残基をリジン以外のアミノ酸へ置換した単一変異株についてV-ATPase活性を調べた結果、アスパラギン酸,グルタミンなどへの置換によっても同様に酵素活性が低下したことから、E50自身が酵素活性に重要なアミノ酸残基であり、50番目の残基はグルタミン酸であることが必須であると示唆された。E50残基はNtpKリングとNtpCとの境界面に位置する残基であるため、E50K変異によりNtpK第1および第2へリックスの構造(位置関係)が変化し、活性の低下が見られたと考えられる。以上の成果について学会発表を2件行い、現在投稿準備中である。 さらにNtpKの結晶構造に基づき、NtpKサブユニットの細胞質側ループに部位特異的変異導入を行っているが、現在のところ活性への影響がみられる変異は単離されていないため、今後はNtpCを主な対象として変異導入と活性評価を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度単離した変異体について解析を進め、NtpKのE50残基がV-ATPaseの酵素活性に関わる重要なアミノ酸残基であることを示した。以上の成果については2件の学会発表を行い、現在投稿に向けての最終実験を進めている。しかし精製した本変異型酵素を用いてATP加水分解と輸送活性の測定を行い、V0-V1部分のカップリングが正常に行われているかについて評価する予定であったが、酵素の精製段階で多少の遅れが生じている。そのため現在、NtpK/C両サブユニットに対するランダム変異導入による抑圧変異・活性消失型変異の単離と、輸送活性の測定など細胞を用いた生化学的解析などを優先的に進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までに単離した変異について解析を進め、NtpC-NtpK間の相互作用について鍵となる構造に関する知見を得る。NtpK(E50K/E139D)変異型酵素については引続きV-ATPase複合体形成の確認および精製酵素を用いた活性評価を行う。NtpCについては、Thermus菌プロトンATPaseサブユニットCの結晶構造を参考に、NtpKとの接触面に位置すると予想されるNtpC上の残基を選択した。これらについて変異体を作製し、NtpC発現相補系を用いて酵素活性・複合体形成への影響を検討する。いずれにおいても、V-ATPase複合体形成能を保持しながらも、かつ酵素活性の低下を示す変異体の取得を目指してスクリーニングを行う。このような変異体はuncoupling変異である可能性があり、酵素の反応機構を明らかにするうえで有用である。 各サブユニット遺伝子の発現相補系は確立しているので、多重変異型酵素の生化学的解析を行うためのntpC/ntpK二重遺伝子破壊株およびNtpC/NtpK二重変異型酵素の精製-再構成系の構築をさらに進める。これは精製変異型酵素を用いた反応速度論的解析に利用し、V-ATPaseの回転とイオン輸送のエネルギー共役に関するパラメーターを取得する。 また別課題において酵母液胞トランスポーターがアゾール系などの薬剤感受性に関与することを報告した。液胞トランスポーターの活性にはV-ATPaseにより形成されるプロトン駆動力が大きく影響することから、本課題とも関連する結果であり、今後V-ATPase活性と抗真菌薬感受性との関係性についても研究を展開していく。
|
Causes of Carryover |
酵素精製準備が遅れたことから、精製に必要な試薬類の発注を延期したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年3月中に準備が整ったため、該当の試薬類は早急に発注する。
|
Research Products
(3 results)