2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860008
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
原田 慎吾 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50722691)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 挿入反応 / ロジウム / カルベノイド / アミド / ヘテロ環 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属カルベノイドの挿入反応は、不活性な結合の開裂と新たな二つの結合形成を一挙に起こす極めて強力な反応である。一般的な金属カルベノイドの化学では、C-H結合や炭素-炭素多重結合への挿入反応が知れており、様々な合成展開が既に達成されている。今回、我々は強固なアミドC-N結合へのカルベノイド挿入反応の開発を検討した。本挿入反応は過去に報告例がなく、複雑な骨格を持つ窒素架橋型分子の新規合成法に成り得ると考え、本研究を開始した。 種々の検討の結果、Rh(II)触媒存在下、分子内にラクタム構造を有するジアゾ化合物をジクロロメタン/ジオキサン混合溶媒中で反応させたところ目的のアミド結合への挿入反応が進行し、アザビシクロ[4,2,1]ノナン骨格を持つ化合物を得ることに成功した。収率向上を目指し、新たにロジウム金属錯体の設計・合成を行い、本反応に用いたところ最高で98%収率で挿入体を与えた。基質一般性の検討を行ったところ、広い適用範囲を示すことがわかり、様々な窒素渡環型化合物が合成可能であることを見出した。さらにアミドのベータ位に分岐鎖を有する基質にも本反応は適用可能であり、官能基化されたアザビシクロ[2.2.2]オクタンを中程度の収率で与えた。本生成物はジケトン構造を有するため、その位置選択的官能基化を検討したところ、良好な選択性で認識することが可能となった。合成した窒素渡環型化合物からアセチルコリン受容体拮抗剤であるAnatoxin-aの形式全合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、カルベノイドのアミド結合への挿入反応が効率良く進行する条件・触媒を開発した。また基質適用範囲の拡張を行い、一般性の高い窒素含有渡環型化合物の合成法へと展開した。生物活性天然物:Anatoxin-aの合成研究においては、多段階を要する点においては改善の余地を残すものの、既知中間体への誘導に成功した。以上より本研究は現在のところほぼ実施計画通りに推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) メカニズム解析 アミド挿入反応はアンモニウムイリドを経由する段階的な経路が想定されるが、詳細は明らかになっていない。分子計算を駆使したメカニズム解析を行い、極めて高い結合エネルギーを有するアミド結合へ選択的に挿入する理由を明らかにする。N-イリド形成の確認やC-H挿入との競争に勝る要因等を明らかにし、カルベノイド化学への理解を深める。 2) 抗癌活性物質前駆体Catharanthineの全合成 アミド挿入反応に続く連続的還元により高ジアステレオ選択的に窒素渡環型のメソジオールを得ることに成功している。ヒドロキシ基の触媒的不斉アシル化による非対称化反応を検討し、光学活性体への変換を検討する。また得られるヒドロキシエステルを(-)-Catharanthineへと誘導し不斉全合成を行う。Catharanthineは心筋に対する薬理活性を持つ天然物であり、また抗ガン剤:Vinblastineの前駆体と考えられている。今回、分子の対称性を利用した効率的不斉全合成経路の開拓に取り組む。 3) 関連反応の模索 確立した最適条件を用いて、不飽和アミド、ウレア、エステル等への挿入反応を検討し、反応拡張を目指す。特にウレタンへの挿入反応が可能となれば、新規のアミノ酸合成法として展開が期待される。
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