2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 圭一 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (40633392)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パーフルオロアルキル化 / ハロゲンー亜鉛交換反応 / ジアルキル亜鉛 / 官能基選択性 / DFT計算 / 機能性分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機含フッ素化合物の代表的な応用例としては医薬・農薬・機能性分子が挙げられます。そのため、これまでトリフルオロメチル基をはじめとする低フッ素化アルキル基やフッ素原子の有機分子への導入法が精力的に開発されてきました。申請者は、これまで合成化学的に未成熟であった有機分子、とくに芳香族化合物への「パーフルオロアルキル基」の導入法を発展させるべく研究に取り組みました。 一般にパーフルオロアルキル金属種は極めて不安定であり、その使用には極低温条件が要求されておりました。申請者は亜鉛に注目し、①ジアルキル亜鉛とハロゲン化パーフルオロアルキルのハロゲンー亜鉛交換反応により、パーフルオロアルキル基ー亜鉛結合を生成すること、②亜鉛の配位子として、中性有機 Lewis 塩基であるN,N'-ジメチルプロピレン尿素を用いることを鍵として、室温から 120℃ 下でも安定なパーフルオロアルキル亜鉛錯体を創製しました。 触媒量のヨウ化銅 (10 mol%) の存在下、本錯体が種々のヨウ化および臭化アリールとのクロスカップリング反応により、目的のパーフルオロアルキル化芳香族化合物を中程度から高収率で与えることを見出し、さらにヘテロ芳香環へのパーフルオロアルキル基の導入も可能としました。一分子に複数のパーフルオロアルキル基を導入する「マルチパーフルオロアルキル化反応」も可能であり、本手法によってパーフルオロアルキル基による「機能性分子の誘導体化」を効率的に行うことができるようになると期待されます。 さらに、本錯体が「アルゴン雰囲気・室温・遮光条件下」にて、少なくとも3ヶ月は活性を損ねず安定に存在し、調製直後と同等の収率でカップリング反応を進行させることも併せて確認しております。この錯体の安定性は、密度汎関数法を用いた理論計算によっても裏付けられました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の開始時において、低収率ながらカップリング反応の進行は確認されておりましたが、種々条件検討の結果、N,N'-ジメチルプロピレン尿素を溶媒・配位子として用いることが鍵となり、高収率で反応が進行することを見出しました。様々な官能基を有する基質を用いての反応を行い、本反応の極めて高い官能基許容性を確認することができました。また、理論計算により、なぜパーフルオロアルキル亜鉛が安定なのか?についても知見を得ることができました。 本研究成果は、本年、Chemistry, A European Journal に Hot Paper として掲載され、新たなフッ化アルキル導入方法として注目を集めております。
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Strategy for Future Research Activity |
提案研究課題の一つである「芳香族化合物へのパーフルオロアルキル化反応」については、研究成果を論文化することができましたので、本年度はその他の研究提案である「アルキル炭素へのパーフルオロアルキル基導入反応」を指向した検討を行います。まずは、既に初期検討を終えているカルボニル炭素へのパーフルオロアルキル基の付加反応を確立することを中心に行い、それに引き続き、C=NおよびC=C結合への付加反応の検討も行う予定です。
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