2014 Fiscal Year Research-status Report
テトラシアノシクロペンタジエニドを特徴とする万能型不斉触媒の開発
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26860018
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 助教 (90583873)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テトラシアノシクロペンタジエニド / 不斉反応 / アルドール / マンニッヒ / 不斉アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
テトラシアノシクロペンタジエニド類は超強酸共役塩基の一種である。今年度は、我々が開発した独自の効率的合成法を基盤とし、3,3’-位に置換基を有するビナフチル基を不斉補助基に持った同塩類の合成並びに、これを用いた不斉反応の検討を行った。 1) 不斉アニオン塩の合成:設計した不斉アニオン塩の合成は、当初の予定通り順調に進んだ。3,3’位に置換基を有するビナフトールとカルボキシル基を有するテトラシアノシクロペンタジエニド塩をEDCI縮合で連結し、1つめのC5(CN)4アニオンを導入した。2つめのC5(CN)4アニオンの導入は塩基性条件下におけるニトロフェニルエステルへの求核付加反応により行った。NMRより合成したアニオンの回転異性体が確認されるなどの興味深い現象を観察することも出来た。 2) 向山アルドール反応の検討:合成したアニオン塩が、向山アルドール反応を加速することを確認した。すなわち、ベンズアルデヒドのジクロロメタン溶液を-80度に冷却し、ケテンシリルアセタールを加え、合成した不斉アニオン塩を加えると付加体が高収率で得られてきた。また、カウンターカチオン部位をLi、Na、K、Mg、Caなど様々なアルカリ・アルカリ土類金属へ変えて、3,3’位の置換基をアントラセニル・ビフェニル基へと嵩高くして検討を行った結果、Mg塩を用いたときに10% ee程度とわずかではあるが不斉誘導が起こることが明らかになった。 3) イソキノリニウム塩への付加反応の検討:C5(CN)4アニオンの高い脂溶性・安定性を生かし、反応性カチオンの脂溶性向上による反応の触媒化を検討した。すなわち、ベンゼン中イソキノリンに酸塩化物を加えて発生するイソキノリニウム塩に対するシリルエノールエーテルの求核付加反応が、触媒量のC5R(CN)4塩添加により大きく加速されることが明らかになった。合成した不斉アニオン塩を用いて、不斉反応も試みると、数% ee程度とわずかな不斉収率ではあるが不斉誘導が起きた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、前年度の研究においては、不斉超強酸アニオン塩を用いた不斉反応の開発の基盤として、まず、当初の設計に基づいた不斉テトラシアノシクロペンタジエニド塩の合成を行った。この触媒合成は、当初の計画通り順調に進行した。また、これらが2種類の反応において高い触媒能を有することも確認出来たのは、前年度の研究における大きな進歩であると言える。しかしながら、得られる不斉収率は今のところまだ十分ではなく、その面においては、2年目における重要な検討課題である。 とはいえ、現在までに、超強酸クラスの安定なアニオンに不斉補助基を導入してイオン性結合を介して不斉誘導を達成した例はほぼ皆無といって良く、挑戦的な課題であることに変わりはない。2年目は1年目で確立した不斉アニオンの合成手法、および発見した触媒反応を中心に検討を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績と自己評価を踏まえ、2年目は以下の課題を中心に検討する。 1) 不斉アニオンの更なるチューニング:1年目の研究においては、テトラシアノシクロペンタジエニルアニオンとビナフチル部位の連結部位は主にエステル結合であった。しかし、エステルであったためにカルボニル酸素の電子密度が十分ではなく、当初の「金属カチオンがカルボニル酸素上に位置し、高度な不斉空間中に反応活性中心が位置する」という設計通りに触媒が機能しなかった可能性がある。また、エステル結合を介したばかりに反応中心が不斉場から離れてしまった可能性がある。そこで、アニオンとビナフチル部位の連結部位にアミド結合を有するものや、アニオンとビナフチル部位が直接連結しているものなど、連結部位に焦点を当てて更なる触媒のチューニングを行う。 2) 不斉アルドール・不斉マンニッヒ反応:新しいアニオンの合成と同時に、既に高い触媒能が確認されている2つの反応系を用いて合成した触媒の評価を行う。高い不斉収率が実現できれば、これらの反応の基質一般性検討などを通して論文投稿を目指す。また、同反応を用いた天然物合成も開始していく。 3) 不斉アニオンを用いたベンゾイン縮合の検証:さらには、有機触媒の代表格であるNHC触媒を用いた不斉ベンゾイン縮合への展開を目指す。ベンゾイン縮合は従来カルベン側に不斉補助基を導入することが多く、イオン性結合を介しての高い不斉収率が実現できれば世界的にも高いインパクトを与えるものである。
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Causes of Carryover |
初年度は,触媒の合成および限られた基質での検討が主となり、購入した試薬の種類がそれほど多くなく、予定よりも支出が少なかった。2年目になり、研究が進展すると多様な触媒合成や種々基質合成のために、研究室にない様々な試薬を購入する必要が出てくるため、当初の予定通りの所要額となる見込みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、初年度からの持ち越し分に関しては、主に試薬等の消耗品の購入に当てる予定である。その他、2年目に必要な額の内訳に大きな変更はない予定である。
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Research Products
(13 results)