2015 Fiscal Year Research-status Report
尿中キラルアミノ酸メタボローム解析を利用する鋭敏な非侵襲診断法の開発
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26860023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三次 百合香 九州大学, 薬学研究科(研究院), 特任助教 (80707175)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キラルアミノ酸 / メタボロミクス / 光学分割 / 二次元HPLC / 虚血性腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、D体とL体を区別する尿中キラルアミノ酸二次元HPLC分析装置を完成させるため、タンパク質構成全アミノ酸20種にイソロイシンとスレオニンのアロ体を加えた22種のアミノ酸について、光学分割における移動相中酸濃度およびメタノールとアセトニトリルの組成比を精査し、哺乳類尿試料を用いて尿由来の夾雑成分と分析対象キラルアミノ酸を分離可能な移動相条件を確立した。 また、尿試料では血液や組織試料とは異なる夾雑成分が多数存在するため、キラルアミノ酸のピーク同定および定量値確認には、より選択性の高い分析システムが不可欠である。そこで、質量分析計におけるNBD-アミノ酸の検出条件を最適化し、研究協力企業の株式会社資生堂と質量分析計を検出器として使用する高選択的多次元HPLCシステムを構築した。その結果、ヒト尿中ではD-アラニン、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸およびD-セリンが高濃度に存在することを多次元HPLC-MSシステムにおいても確認した。また、上記以外にも多くのタンパク質構成アミノ酸のD体がヒト尿中に存在することを明らかにした。マウス尿試料においてもD-セリン、D-アラニン、D-プロリン、D-アルギニン、D-リジン、D-フェニルアラニン、D-バリンが存在することを示し、開発したHPLCシステムにより哺乳類尿試料中キラルアミノ酸の網羅的含量解析が可能であることを実証した。 また、疾患モデルとして虚血性急性腎障害モデルマウス尿試料におけるキラルアミノ酸の含量解析を行った。その結果、コントロール群と比較して虚血再灌流後8時間では尿中D-アスパラギン、D-セリン、D-アラニンおよびD-プロリンのD体の割合(%D=D/(D+L)*100)が劇的に減少することを明らかにし、4種のD-アミノ酸が腎障害のマーカーになり得ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、ヒト尿試料を用いて尿由来の夾雑成分と分離するための逆相分離および光学分割における移動相条件の検証・最適化の検討を行い、尿中キラルアミノ酸メタボローム解析装置を完成させ、尿中キラルアミノ酸メタボロミクスによる新規診断指標の探索を進める計画だった。本年度は、光学分割における移動相条件の精査を進めると共に、質量分析計を検出器として用いる高選択的多次元HPLCシステムを構築し、尿中キラルアミノ酸のピーク同定・含量解析を可能にした。また、虚血性腎障害モデルマウス尿試料におけるキラルアミノ酸メタボロミクスを進め、尿中キラルアミノ酸が診断指標となり得ることを示しており、当初の計画通りにおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、尿中キラルアミノ酸メタボローム解析装置を用いて、腎泌尿器疾患、肝疾患、精神・神経疾患、循環器系疾患等におけるヒト臨床検体やモデル動物尿中キラルアミノ酸メタボロミクスを進め、新規診断指標・バイオマーカーの探索・確立を行う。また、九州大学薬学部(浜瀬健司)および研究協力企業㈱資生堂とHPLC部品の開発・改良、逆相カラムおよび高性能キラルカラムの開発を引き続き行い、分析装置の連続安定稼働・高性能化実現のための検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は蛍光検出器の使用法の改善を行うことにより、キセノンランプの消耗が軽減されたため、キセノンランプの購入費が抑えられ差額が生じた。また、慶應義塾大学医学部との共同研究により疾患モデル動物尿試料を効率的に採取でき、実験動物の購入費が軽減され差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、質量分析計を検出器として使用する多次元HPLCシステムを連続稼働させる計画であり、HPLC用の溶媒よりも高価なLC-MS用の溶媒の使用量が増えると考えられるため、平成27年度の差額分を溶媒購入費に充てる。平成28年度は分析システムの連続安定稼働を実現するため、光学分割カラムの安定供給が必要であり、カラムの開発・作製費に差額分を充てる。
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