2014 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグデリバリー微粒子製剤開発の突破口となる医薬品薬物結晶の球形化技術の確立
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26860028
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
近藤 啓太 名城大学, 薬学部, 助教 (90710913)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械的処理 / 球形化 / 医薬品薬物 / 粒子強度 / 付着力 / 結晶多形 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究では、以下の研究成果が得られた。 モデル薬物として、医薬品薬物のテオフィリン、アスコルビン酸、エテンザミドを用い、これらを45-90 μmの粒度範囲に分級したものを機械的処理した。いずれの薬物も機械的処理によって粒子表面が滑らかで真球度の高い球形粒子となった。このとき、テオフィリンとエテンザミドは処理前後で粒子径の著しい低下が確認されたが、アスコルビン酸の粒子径はほとんど変化していなかった。一方で、各薬物結晶の一粒子圧壊強度を測定したところ、粒子強度はアスコルビン酸>テオフィリン≒エテンザミドとなった。そのため、機械的球形化プロセスにおける粒子の破壊過程には、薬物粒子の強度が直接影響することを実証した。さらに、各薬物の球形化メカニズムを確認するため、機械的処理の途中で粉末を取り出し、粒子径などの粉体物性を評価した。いずれの薬物も20 μm以下の微粒子が生じたが、粉体全体に対する微粉の割合はアスコルビン酸>テオフィリン>エテンザミドとなった。また、各薬物の付着力の指標となる内部摩擦角を測定したところ、これらの値は上記の微粉割合と相関することが確認された。この結果より、機械的球形化プロセスにおける微粒子の被覆過程には、薬物粒子の付着力が影響することを明らかにした。 粒子の結晶構造による機械的球形化プロセスへの影響を評価するため、マンニトールのベータ形結晶(安定型)とデルタ形結晶(準安定型)を用いた。各マンニトール粉末を45-90 μmの粒度範囲に分級したものに機械的処理を施した。ベータ形結晶では球形粒子となったが、デルタ形結晶では多量の微粉が生じ、真球度の高い球形粒子は得られなかった。これは、ベータ形結晶とデルタ形結晶では分子パッキングが異なるためであり、結晶構造と粒子の破壊挙動の関係性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では、機械的球形化法において薬物の結晶構造と付着力が球形化プロセスに及ぼす影響を明らかにすることを目標とした。結晶構造と球形化メカニズムの関係について、マンニトールの結晶多形を用いることで、結晶構造によって得られる粒子の特性が大きく変化することを見いだした。また、種々の医薬品薬物を用いた検討において、粒子強度が球形粒子の粒子径に影響することを確認したことで、薬物の結晶構造と粒子強度と球形化メカニズムの間の関係性を示唆した。付着力と球形化メカニズムの関係について、機械的処理プロセス中に生じる微粉量が薬物の種類に依存しており、これは薬物粉末の内部摩擦係数(付着特性を表す指標)と相関することを明らかにした。以上より、平成26年度はおおむね計画通りに研究を実施し、有用な知見が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
医薬品薬物結晶の球形化メカニズムと薬物粒子の性質の関係性を微視的な物性パラメータを用いて解明を行う。機械的処理時の薬物結晶の破壊過程をより詳細に調べるため、走査型プローブ顕微鏡を用いたナノインデンテーションにより薬物粒子の押込み強度ならびにヤング率を測定する。さらに、各薬物の結晶構造における分子パッキングと破壊特性との関係性を明確にすることで、球形化時の粒子の破壊過程を微視的に解明していく。また、機械的処理時の薬物微粒子の付着被覆過程をより詳細に調べるため、走査型プローブ顕微鏡を用いて薬物結晶の表面電位や帯電性を測定するとともに、結晶表面の摩擦抵抗力を測る。これらのデータと各薬物の表面自由エネルギーとの関係性を考察し、機械的ストレス下での薬物粉末の付着特性を評価することで、球形化プロセスの付着被覆過程を微視的に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
医薬品原末(テオフィリン、エテンザミド、アスコルビン酸、マンニトール)について、最初に購入したロットを用いた実験で、当初の計画よりも順調に有益な知見が得られたことで、医薬品原末の年度内の追加購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
医薬品原末(テオフィリン、エテンザミド、アスコルビン酸)の追加購入で100千円を予定している。また、走査型プローブ顕微鏡は文部科学省分子物質合成プラットフォーム事業を利用するため、機器利用費および旅費として150千円を見込んでいる。薬物の結晶についての情報収集のため書籍代に70千円を予定している。また、関連学会での研究成果の発表(2回予定)のため、参加費および旅費として約140千円、論文発表のための英文校正費として約80千円を計上予定である。
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