2014 Fiscal Year Research-status Report
プロサイモシンαによる癌幹細胞の創出・維持に関連した免疫抑制機構の解明
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26860038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 龍明 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (50701843)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子生物学 / 分子腫瘍学 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの癌においては、癌細胞の周囲に免疫細胞の浸潤が認められる。免疫細胞には、癌を異物として排除する働きだけでなく、癌の悪性化を助長する全く逆の機能があることが確認されている。研究代表者は、宿主免疫応答が癌にとって有利・不利に働く機能変換を分子レベルで解明し、これまでにない全く新しい癌治療戦略を構築したいと考えている。癌細胞が生じた初期は、免疫細胞が適切に癌細胞を死滅させるが、時間経過に伴い免疫細胞と癌はお互いを許容する変容を遂げる。研究代表者は、免疫応答によって殺傷された癌細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)によって、癌に対する免疫応答が変容するという仮説の立証に取り組んでいる。特にプロサイモシンアルファ(PTMA)は、DAMPsとして細胞外に放出されると、自然免疫担当細胞に働きかけ、神経保護に寄与することが分かっているが、癌に対する免疫応答という見地からの研究は進んでいないため、研究の糸口としても解析対象としても興味深い分子である。現在のところ、免疫細胞の異物応答反応を適切に評価できる新規3次元細胞培養系を樹立中である。また、DAMPsが主としてマクロファージに寄与することが分かってきたために、PTMAをはじめとした様々なDAMPs刺激後のマクロファージ機能変換機構について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫細胞と癌細胞の炎症反応を試験管内で再現するような3次元細胞培養系を樹立するために、先行モデル研究を基にして技術開発を進めた。その結果、外来抗原に反応した免疫細胞応答が観察できる新規の三次元細胞培養系の樹立に成功した。また、ヒトマクロファージのDAMPs応答性を評価するin vitroヒトマクロファージ実験系の構築に着手した結果、興味深いことに、比較対象実験で用いた病原体由来抗原刺激によって、マクロファージが免疫抑制に働くような特殊な機能変換を呈することが明らかとなった。この機能変換メカニズムが、癌細胞に対する免疫応答低下と類似のメカニズムである可能性が大いに示唆されたために、この機能変換につながる細胞内シグナル伝達系に関する詳細な生化学・分子生物学的解析を進めている。また、同定した刺激条件と癌微小環境との類似性を比較解析し、癌においても同様の環境が成立するかどうかについて検討を行っている。 なお申請者の異動に伴う実験セットアップ期間があったために、研究実施時間が当初に比べて削減されたが、当初の研究計画では現実的に困難であったために割愛した霊長類モデル動物研究が異動先にて実施に対して高い現実性が獲得できたことは、今後の研究発展において非常に大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
PTMAをはじめとするDAMPs刺激後のマクロファージ機能変換について、前年度に樹立した評価系を用いて解析する、特に免疫抑制に寄与するシグナル経路及び代謝経路の同定を進める。また、偶発的に発見した病原体由来抗原依存性の抑制性マクロファージについても同様に、シグナル経路における分子制御基盤について詳細な生化学・分子生物学的解析を予定する。また、PTMA発現が亢進しているヒト膀胱癌細胞に対する免疫細胞応答について、新規の細胞障害性アッセイを利用して解析を進める。同時に癌微小環境を模倣する新規の細胞培養条件を改良・確立を目指し、生体内環境を模倣した中での癌-PTMA-マクロファージの連関作用について解析を実施する。
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