2014 Fiscal Year Research-status Report
受精促進作用を示す環状オリゴ糖を用いた新規不妊治療法の開発
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26860039
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹尾 透 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 講師 (10517014)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / 精子 / 受精 / 不妊治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、多くの先進国では、晩婚化に伴う生殖環境の悪化により、不妊治療を必要とするカップルが増加している。しかしながら、生殖科学に関する研究は十分に進んでおらず、不妊症に対する対策が遅れているのが現状である。これまでに申請者らは、環状マルトオリゴ糖であるシクロデキストリンが、精子の受精能向上に有用であることを見出している。そこで本研究では、シクロデキストリンを用いた生殖機能改善薬への応用を目指し、シクロデキストリンによる受精能促進作用に関して詳細な検討を行った。今年度は、精子の活性化作用を有するシクロデキストリンを探索し、構成グルコース数が異なる3種類のシクロデキストリンが有用であることを明らかにした。次に、精子受精能マーカーに対する作用を調べたところ、各種シクロデキストリン処理により精子頭部の脂質ラフトの再構成や先体反応が誘起されることが明らかになった。さらに、精子の受精能活性化に必須であることが知られるコレステロールの漏出について調べたところ、コレステロールおよびリン脂質を漏出させるシクロデキストリンとリン脂質のみ漏出させるシクロデキストリンが確認された。本知見からシクロデキストリンによる精子の活性化において、リン脂質の漏出を介した新規経路が関与することが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、受精能促進作用を有する新たなシクロデキストリンの発見、各種シクロデキストリンによる精子の受精能マーカー上昇を確認、さらに精子の受精能活性化におけるリン脂質の漏出を介した新規経路を見出した。これらの成果から、当初計画した研究目的はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、各種シクロデキストリンによる精子の活性化機構の解明および生殖機能低下マウスに対するシクロデキストリンの有用性について評価する。精子の活性化に関与する脂質を同定するために、シクロデキストリン処理精子から回収した上清を用いて、質量分析機器を用いた解析を行う。また、本研究に使用するマウスは、生殖工学技術を用いて効率的に繁殖し、迅速に研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由は、各種シクロデキストリンの有用性評価や受精能活性化機構の解明に関して目的とする結果が順調に得られたことで安価に研究が遂行されたことや実験に必要となるマウスを繁殖中であり、次年度予定していた実験を実施するためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、マウスを使用してシクロデキストリンによる精子の受精促進作用について解析を行う。本研究を遂行するために、動物実験の繁殖や飼育に必要となる費用、精子の機能解析用の試薬および消耗品費、脂質解析用の試薬および消耗品費、本研究に関する成果報告および情報収集のための学会参加費、論文投稿費として研究費を使用する。
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