2014 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを起点とした食道扁平上皮癌転移メカニズムの解明
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26860040
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
土屋 創健 熊本大学, 生命科学研究部, 講師 (80423002)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | microRNA / 食道扁平上皮癌 / 遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の主眼は、ヒト食道扁平上皮癌組織で発現量が有意に変化していたmicroRNAの中から食道扁平上皮癌の転移、特に遊走過程に関与するmicroRNAを見いだし、その作用点・機序を解明することである。 ヒト食道扁平上皮癌組織において発現量が低下していたmicroRNA4種と、逆に発現量が亢進していたmicroRNA3種をそれぞれ導入したヒト食道扁平上皮癌細胞株を用いて、トランズウェルを用いたin vitroの遊走実験系により遊走能を評価した結果、発現量が低下していたmicroRNA2種をそれぞれ導入した際にヒト食道扁平上皮癌細胞株の遊走能が低下した。一方、発現量が亢進していたmicroRNA3種においてはいずれも遊走能の亢進は検出されなかった。遊走能が低下したmicroRNA2種の内1種に関して、ヒト食道扁平上皮癌においては5つの遺伝子が標的候補であり、これらはいずれも既知の遺伝子であるものの、その機能に関してはほとんど不明であり、少なくとも遊走に関する知見は皆無であった。そこで、loss of function解析として、siRNAを用いたノックダウン実験を行った結果、標的遺伝子のうち2種が少なくとも遊走能に関与する可能性が示唆された。しかしながら、gain of function解析として、標的遺伝子2種をそれぞれ過剰発現させた培養細胞を用いて遊走実験を行ったところ、コントロールに対して顕著な差は見いだせなかった。そこで、マーカータンパク質としてGFPを過剰発現させて実験系の評価を行ったところ、実験過程のstarve処理により導入した遺伝子に由来するタンパク質が分解されており、導入した遺伝子の機能を評価できていない可能性が示唆された。現在、この問題点の解決に向け、プロテアーゼインヒビターなどを用いて過剰発現における遊走実験系の構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2年計画の1年目に該当し、本年度においてヒト食道扁平上皮癌の遊走能に関与するmicroRNAを同定し、その標的遺伝子を見いだす計画であった。その結果、遊走能に抑制するmicroRNA2種を同定し、その内1種に関してloss of function解析から標的遺伝子の少なくとも2つが遊走能に関与する可能性を見いだした。現在、標的遺伝子の過剰発現における遊走実験系の構築に苦慮しているものの、本研究課題はおおむね計画に沿って進行しており、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはプロテアーゼインヒビターを用いたり、実験系のタイムコースを修正したりして、過剰発現における遊走実験系の構築を行い、loss of function解析とgain of function解析の両方から遊走能に関与する遺伝子を同定し、遊走における新規の作用メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
標的遺伝子の過剰発現における遊走実験系の構築に苦慮し、進行が遅れた分で、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額に関しては次年度の予算とあわせて、次年度の機能解析等に用い、ヒト食道扁平上皮癌の遊走における新規の作用メカニズムの解明を行う上で適切に使用する計画である。
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