2014 Fiscal Year Research-status Report
脳の形成と機能を司る分泌蛋白質リーリンの、機能制御機構の解明とその創薬への応用
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26860043
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河野 孝夫 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70581742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リーリン / dab1 / プロテオリシス / 神経細胞移動 / 樹状突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、巨大分泌蛋白質リーリンのプロテオリシス(蛋白質分解)による機能制御機構、及びその生理的意義の解明を目的とする。
脳におけるリーリン分解に対するADAMTS-3の寄与を明らかにするために、ADAMTS-3ノックアウトマウスにおけるリーリンの分解を調べた。その結果、胎生期の大脳皮質では、野生型マウスに比べADAMTS-3ノックアウトマウスでは有意にリーリン分解が減少した。このことから、胎生期においてADAMTS-3はリーリン分解を担う主要なプロテアーゼであることがわかった。さらに、リーリンの下流シグナル分子Dab1(リーリンの活性によりリン酸化を受けダウンレギュレーションされる分子)の量が野生型マウスに比べADAMTS-3ノックアウトマウスでは有意に増加することもわかった。このことは、脳内におけるADAMTS-3によるリーリンの分解は、リーリンの機能を負に制御することが明らかとなった。
リーリンのC末端領域を欠くマウスの解析により、リーリンのC末端領域は遅生まれの神経細胞の配置と樹状突起発達に必要であり、C末端領域内の分解により制御されることを明らかにし、論文として発表した(Kohno et al., J. Neurosci., 2015)。 また、C末端領域内分解により制御されるリーリンシグナル機構を明らかにするために、アルカリフォスファターゼ融合リーリンをprobeとして、完全長のC末端領域に結合する分子が脳スライス上に存在するかを調べた。その結果、大脳皮質の全体や海馬のアンモン角に、完全長のC末端領域に結合する分子が存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内におけるリーリン分解のメカニズムと意義が明らかになりつつあり、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
リーリン機能増強の効果を調べるために作製したリーリン発現アデノウィルス発現ベクターは、期待していたほどリーリンが発現しなかったため、力価を上げるなどを行い研究を進める予定である。
脳におけるリーリン機能増強の効果を明らかにするために、リーリンC末端領域欠損マウスとADAMTS-3ノックアウトマウスを交配し、樹状突起発達や細胞配置の異常がリーリン分解抑制によりレスキューされるかを調べる。
完全長のC末端領域に結合する分子の同定を試み、C末端領域内分解により制御されるリーリンシグナル機構を明らかにする。
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