2015 Fiscal Year Annual Research Report
カルジオリピンを中心とした線虫体細胞の生存に必須なリン脂質とその代謝経路の同定
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26860045
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂本 太郎 北里大学, 薬学部, 助教 (10383655)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カルジオリピン / 線虫 / リン脂質 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
カルジオリピン(CL)はミトコンドリアの内膜特異的に存在し、ミトコンドリアの機能や構造の維持に必須なリン脂質であると考えられている。CL合成酵素を欠損した線虫C. elegansでは、生殖細胞のミトコンドリアに異常を来たし不妊になるにも関わらず、体細胞のミトコンドリアは正常に保たれることを研究代表者は明らかにしている。本研究の目的は、体細胞のミトコンドリアがカルジオリピンの減少という危機的状況をどのように回避するのか、その分子基盤を明らかにすることである。平成27年度において研究代表者は、未知のCL合成経路の順遺伝学的スクリーニングによって得られた変異線虫のCL定量と他のリン脂質によるCL機能の相補に関する解析を行った。 CL合成酵素(cls-1)欠損線虫は活性中心がゲノムから欠失しているにも関わらず、CLは野生型に比べ40%残存していることから、未知のCL合成経路の存在が示唆される(便宜的に未知の経路に関わる酵素をcls-2と呼ぶ)。スクリーニングによって得られた4ラインのcls-1(+/-);cls-2(-/-)候補線虫に対してCLを含む各種リン脂質の定量を行ったところ、4ライン中2ラインで若干CLが減少していたが、他の2ラインについてはCL量の変動は見られなかった。ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンといった他のリン脂質含量に変動は見られなかった。申請者はcls-1欠損線虫に対してホスファチジルセリン(PS)合成酵素のRNAiを行うと成長停止が起きることを明らかにしているが、スクリーニングによって得られた4ラインのcls-1(+/-);cls-2(-/-)候補線虫ではPSの含量に変動は見られず、これらの4ラインはPS合成とは無関係に体細胞に異常が現れているものと考えられた。以上の結果より、線虫にはCL合成に関わる新規経路が存在するものと考えられた。
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