2015 Fiscal Year Research-status Report
胸腺内CD8陽性T細胞分化におけるFGF21の生理的役割の解明
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26860048
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
増田 有紀 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (40421284)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | FGF21 / 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
FGF21は、主に肝臓で産生され、糖・脂質代謝を調節すると考えられている。一方で我々は、FGF21が胸腺でも発現していることから、FGF21の胸腺内の生理的役割について研究を行った。 これまでの結果より、FGF21は胸腺上皮細胞から産生されることを明らかにしている。胸腺上皮細胞には皮質上皮細胞(cTEC)と髄質上皮細胞(mTEC)が存在する。TECをUEA1レクチン陽性のmTECと陰性のcTECに分画し、MHCクラスⅡ分子の発現量によってさらに成熟 (MHC Ⅱhi) または未成熟 (MHC Ⅱlow) なTECに分画した。その結果、FGF21は成熟mTECに最も発現しており、cTECにもわずかに発現が認められた。 次に、胎生15日のマウス胎児胸腺を採取して胎児胸腺器官培養(FTOC)を行い、FGF21の添加によるT細胞の分化に対する影響を調べた。培養14日目に細胞を回収し、TCRβとCD69の発現パターンによってT細胞の分化ステージを5つの段階に分け、それぞれの割合をフローサイトメトリーで解析した。その結果、最も未分化なステージ1 (TCRβlowCD69-)と2 (TCRβintCD69-)の割合はFGF21添加により有意に減少した。一方で、3 (TCRβintCD69+)に変化は見られなかったが、正の選択を受けた後の4 (TCRβhiCD69+)と5 (TCRβhiCD69-)はFGF21添加により有意に増加した。 FTOCと同様に、野生型マウスとFGF21ノックアウトマウスの胸腺T細胞を、TCRβとCD69の発現をもとに解析したところ、ステージ1-3に違いは見られなかったが、ステージ4と5の割合はFGF21 KOマウスで有意に減少していた。 以上の結果から、FGF21は胸腺内の成熟mTECによって産生され、T細胞の分化を促進し成熟T細胞の割合を増加させることが明らかになった。したがってFGF21は、T細胞に直接作用し分化を促進する可能性、あるいは、TECを介した正負の選択を強く誘導する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に産前産後休暇および育児休暇を取得し半年間研究が中断したため、全体としては研究計画にやや遅れを感じている。平成27年4月より研究を再開し、以降はFTOCを用いた作用メカニズムの研究とKOマウスの解析について順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、FGF21添加によってFGFシグナル経路の活性化が起こる細胞を探索する。FGF21タンパクを生体から単離した各種T細胞やTECに添加し、代表的なFGFシグナル伝達因子であるERKのリン酸化や、FGF21シグナルによって1時間程度という非常に短期間で発現が誘導されるearly growth response-1を評価することで、FGF21の作用細胞を推定する。 次に、FGF21のT細胞に対する直接作用を検討するために、FGF21存在下で胸腺T細胞を培養し、TCRβとCD69の発現パターンを調べて分化段階に及ぼす影響を調べる。一方で、FGF21がTECに作用する可能性を調べるため、T細胞を除去した2-deoxyguanosine処理胎児胸腺にFGF21を添加した時のTEC細胞数と機能遺伝子の発現について調べる。 さらに、FGF21が胸腺内T細胞分化の過程で細胞増殖やアポトーシスに関与している可能性を考え、FTOCを用いてFGF21存在下で培養を行い、検討する。細胞増殖に関してはBrdUの取り込み、アポトーシスに関してはAnnexin V染色により検討する。
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Causes of Carryover |
産前産後休暇および育児休業(平成26年8月14日~平成27年3月31日)取得のため、研究が中断した。平成27年4月1日から研究を再開したが、約半年の中断により研究計画に遅延が生じたため、次年度に研究を継続し使用するものとする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫細胞の検出とセルソーターを用いた分画のため、蛍光標識特異抗体が必要となる他、細胞内シグナル伝達因子の検出のための抗体など、昨年度に引き続き試薬購入に研究費を使用する予定である。
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