2014 Fiscal Year Research-status Report
免疫抑制性sPLA2の機能に関する基盤構築とその創薬に向けた展開
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26860051
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
三木 寿美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (00632499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / 脂質 / 脂肪酸 / DHA / レゾルビン / 抗炎症 / 樹状細胞 / 皮膚疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、将来的なヒト疾患への展開を視野に、sPLA2-IID遺伝子改変マウスを用いて様々な疾患における本酵素の免疫抑制作用の普遍性を検証し、本酵素を標的とした創薬展開に向けての理論基盤を構築することを目的としている。 本年度は、乾癬(Th17応答)モデルを中心に本酵素の遺伝子欠損(KO)マウスおよび全身性遺伝子過剰発現(TG)マウスの表現型解析を行った。その結果、KOマウスでは、これまでに報告した接触性皮膚炎(Th1応答)のみならず、Th17応答依存的な乾癬も増悪することが分かった。また、TGマウスでは、Th1およびTh17応答のどちらの炎症性疾患モデルにおいても、野生型マウスと比較して病態が改善することが明らかとなった。これらの成果は、炎症免疫疾患におけるsPLA2-IIDの「免疫抑制作用」の普遍性を強く示唆するものであり、本研究の1つの目標達成に近づいたと思われる。 さらに、最近、樹状細胞特異的TGマウスの導入にも成功し、sPLA2-IIDによる免疫機能制御メカニズムを解明するための有力なツールとして活用できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乾癬モデルを用いた解析を積極的に行い、KOマウスとTGマウスの表現型について予定していたほぼ全ての検証を終えることができた。樹状細胞特異的TGマウスは、現在、実験に用いる個体数を得るために繁殖を行っており、間もなく病態モデルを施行できる段階にある。樹状細胞特異的TGマウスに病態モデルを適用した際の表現型解析、および、ex vivoの系を用いた解析は、本酵素の「免疫抑制作用」の解明に有用であり、本マウス導入の意義は非常に大きい。また、Th1やTh17応答モデル以外にも、代謝組織の慢性炎症を評価するメタボリックシンドロームの病態解析が進んでおり、一般的な炎症病態モデルの解析はほぼ網羅できたと思われる。 さらに、遺伝子改変マウスに皮膚癌モデルを適用した際の病態解析も進行中であることから、本酵素のもう1つの機能である「癌免疫賦活化作用」のメカニズムについての検証も完了しつつある。 しかしながら、まだ検討を行えていない病態モデルがいくつかあるため、今後の研究はこの点を重点的に推進していく必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は主に以下の3つの項目を重点的に推進したい。 (1)樹状細胞特異的遺伝子改変マウスにおける各炎症免疫疾患モデルの病態解析:導入の遅れにより計画全体が遅延していた樹状細胞特異的遺伝子改変マウスを用いた解析に積極的に取り組み、樹状細胞を介したsPLA2-IIDの作用メカニズムを明らかにする。 (2)他免疫モデルへの応用展開:まだ実施できていない病態モデルを各遺伝子改変マウスに適用し、本酵素の機能を多角的にとらえる。 (3)創薬に向けての応答展開:所属研究機関ならびに共同研究医療機関から提供を受けたヒト疾患病態組織を用い、これまでにマウスで構築した本酵素の機能と発現変動との相関性をヒト疾患に展開する(倫理委員会承認済み)。また、本酵素自体やその代謝産物の「免疫抑制薬」としての可能性、および、本酵素阻害薬や中和抗体の「癌免疫賦活薬」としての可能性を検証するため、モノクローナル抗体の作製に早急に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
樹状細胞特異的遺伝子改変マウス獲得の遅れにより、本研究の主な検証事項の1つである樹状細胞に着目した解析全体が停滞した。これにより、解析に使用予定であった各消耗品の購入が減少し、結果、消耗品費の使用額が低下した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画遅延の原因であったマウス導入の遅れが解決したため、当該年度に予定していた検証は次年度に集中して行うこととする。次年度使用額は、この解析を行うための消耗品費として使用し、先に次年度内で計画していた各使用内訳には変更ないものとする。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Emerging roles of secreted phospholipase A2 enzymes: the 3rd edition.2014
Author(s)
Murakami, M., Taketomi, Y., Miki, Y., Sato, H., Yamamoto, K., and Lambeau, G.
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Journal Title
Biochimie
Volume: 107
Pages: 105-113
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The adipocyte-inducible secreted phospholipases PLA2G5 and PLA2G2E play distinct roles in obesity.2014
Author(s)
Sato, H., Taketomi, Y., Ushida, A., Isogai, Y., Kojima, T., Hirabayashi, T., Miki, Y., Yamamoto, K., Nishito, Y., Kobayashi, T., Ikeda, K., Taguchi, R., Hara, S., Ida, S., Miyamoto, Y., Watanabe, M., Baba, H., Miyata, K., Oike, Y., Gelb, M. H., and Murakami, M.
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Journal Title
Cell Metabolism
Volume: 20
Pages: 119-132
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] New insights into PLA2s: from outside and inside.2015
Author(s)
Murakami, M., Taketomi1, Y., Sato, H., Miki, Y., Hirabayashi, T., and Yamamoto, K.
Organizer
The 6th international conference on Phospholipase A2 and Lipid Mediators from bench to translational medicine.
Place of Presentation
Keio Plaza Hotel Tokyo, Shinjuku-Ku, Tokyo, Japan
Year and Date
2015-02-10 – 2015-02-12
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[Presentation] A unique lipid pathway driven by group IIF sPLA2 undelies epidermal-hyperplasic disorders.2015
Author(s)
Yamamoto, K., Miki, Y., Taketomi, Y., Kambe, N., Kabashima, K., Lambeau, G., Gelb, M. H., and Murakami, M.
Organizer
The 6th international conference on Phospholipase A2 and Lipid Mediators from bench to translational medicine.
Place of Presentation
Keio Plaza Hotel Tokyo, Shinjuku-Ku, Tokyo, Japan
Year and Date
2015-02-10 – 2015-02-12
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[Presentation] Group IIF sPLA2 promotes skin carcinogenesis.2015
Author(s)
Yamamoto, K., Miki, Y., Sato, M., and Murakami, M.
Organizer
The 6th international conference on Phospholipase A2 and Lipid Mediators from bench to translational medicine.
Place of Presentation
Keio Plaza Hotel Tokyo, Shinjuku-Ku, Tokyo, Japan
Year and Date
2015-02-10 – 2015-02-12
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[Presentation] Phospholipase A2 and Lipid Mediators in Health and Disease.2014
Author(s)
Murakami, M., Taketomi, Y., Sato, H., Miki, Y., and Yamamoto, K.
Organizer
2014 YONSEI BK21 PLUS-IGAKUKEN Joint Symposium ”Transnational Exchange of Science between Korea and Japan”.
Place of Presentation
Seoul, Korea
Year and Date
2014-06-19 – 2014-06-22
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