2015 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病・肥満に伴う慢性炎症における脂肪酸受容体GPR120の分子機序の解明
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26860054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原 貴史 京都大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (90546722)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪酸受容体 / 脂肪酸 / 炎症 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題は、脂肪酸をリガンドとするGタンパク質共役型受容体 (脂肪酸受容体ファミリー) のうち、長・中鎖不飽和脂肪酸をリガンドとするGPR120についてその生理学的機能を解明することを目的としている。長・中鎖不飽和脂肪酸には、リノレン酸やドコサヘキサエン酸 (DHA) など疫学的にも様々な健康増進作用が知られているものも含まれており、GPR120がこれらの作用を仲介する新たな分子メカニズムの一つであると共に、疾患制御にも密接に関わっていることが示唆されている。GPR120はこれまでにエネルギー代謝や炎症応答の調節に関与することが報告されているが、免疫細胞における役割は十分に検討されていない。そこで、本申請課題では、免疫細胞における発現とその機能に着目し、炎症応答の制御メカニズムと疾患への関与について検討を行った。これまでに得られた成果として、GPR120が新たに樹状細胞に発現していることを確認し、分子レベルで炎症関連分子の発現制御に関与すること、また炎症性サイトカインの分泌制御にも関与することが示唆される結果を得た。また、GPR120遺伝子改変マウスを用いて炎症性疾患モデルマウスを確立し野生型マウスの病態と比較したところ、GPR120の欠損により炎症応答とそれにより引き起こされる病態の程度に顕著な差が確認された。以上より、GPR120の炎症性疾患における病態分子メカニズムの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫細胞におけるGPR120を含む複数の脂肪酸受容体の遺伝子発現についてマイクロアレイ等の公共データベースを用いた解析を行い、いくつかの細胞種においてその発現及び発現強度のプロファイル結果が得られた。この結果にはGPR120の発現がこれまでに報告されていない細胞種も含まれており、新規知見に繋がるものであった。特にに樹状細胞については、特定のサブセットへの発現が示唆される結果が得られたことから、in vitro実験によりこれを検討しマイクロアレイの解析結果とほぼ一致する結果を確認できた。また、GPR120遺伝子改変マウスを用いて病態モデルを作製し検討を行い、野生型のそれと比較し病態の悪化を認めた。従って、in vitro及びin vivo実験の両面からGPR120の炎症応答に対する寄与の解明に繋がる成果を得ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
樹状細胞のサブセットごとにGPR120遺伝子の発現の違いが確認されたことから、GPR120が免疫応答の中でもある機能を特異的に制御していることが推察された。一方で、他の脂肪酸受容体についてもサブセット間での遺伝子発現に違いが確認されたことから、複数の脂肪酸受容体が協調的に働き樹状細胞における免疫応答メカニズムを制御している可能性が考えられた。また、腫瘍モデルを用いた結果からGPR120の免疫応答制御を介した腫瘍形成メカニズムへの影響が考えられる。そこで今後は、他の免疫細胞との相互作用や活性化にGPR120がどのように関与するのかを検討すること、また腫瘍形成にGPR120がどのように機能するのかを免疫応答やその関連分子との関わりから検討することを考えている。
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Causes of Carryover |
公共データベースの充実化により、インフォマティクス解析で当初計画の一部を達成でき、新規知見を得たことで大幅な効率化に至った。一方でその解析に時間を要したことから、結果の精密な確認のために追加実験が必要となり、さらに得られた知見を基に新たな施策を含めた検討を行うため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに得られた結果の精緻な確認のため追加実験などが必要となっており、現在予備検討などを進めているが、そのための実験の試薬や消耗品の物品費として使用予定である。また、これまでに得られた新規知見を当該研究分野の進展や医療への展開に繋がる基盤知見として周知するために、国際学会などにおける発表と論文化を予定しており、旅費や論文投稿費にこれを供する予定である。
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