2014 Fiscal Year Research-status Report
種内多様性研究と細胞培養による植物二次代謝多様化誘導因子の解明
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26860066
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
齋藤 義紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (30441588)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 種内多様性 / 細胞培養 / テルペノイド / 系統分類 / 薬用資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体構想は,野生植物が産生する二次代謝産物に種内多様性が生じるメカニズムを解明・制御することによって,潜在的な有用物質産生能を最大限に引き出し,創薬へ貢献することである.多様化の鍵となる因子を突き止めるためのアプローチとして,野生個体の中から実際に同一種内で成分組成の大きく異なるものを複数試料入手して人工培養に付することを企図し,平成26年度は,それに適した試料の採集,成分分析,ならびに細胞培養条件の検討を行った. 試料の採集は長崎県,大分県,高知県,徳島県にて行い,Eupatorium属,Ligularia属,Farfugium属植物を得た.また,長野県産,北海道産および中国産のEupatorium属植物を別途入手した.それぞれLC-MSにて成分分析を行ったところ,本邦産のE. glehniiおよび中国産のE. heterophyllumの種内多様性が顕著であった.前者は以前の報告を支持するものであり,後者については初の知見である.そこで個別の試料について成分の分離・精製を行った結果,主要成分の組成が大きく異なる3種の成分タイプが存在することを見出した.また,F. japonicumは今回採集した試料間での違いは見られなかったが,過去の文献にて報告されている成分組成とは異なっており,種内多様性の存在が示唆された.以上の成分研究において,計26種の新物質を単離・構造決定した. 成分分析と平行して培養条件を検討した.まず,採集した植物試料の各部位からカルス誘導を試みた.その結果,MS培地に最終濃度5μMのオーキシン (2,4-D) と0.5μMのサイトカイニン (BAP) を添加した場合においてE. glehniiの茎とF. japonicumの葉からカルスが誘導された.カルス抽出物のLC-MS分析と液体培養の条件について検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度計画として記載した試料採集,成分分析,カルス誘導を予定通り達成しており,平成27年度計画についてはEupatorium属植物を中心に検討できると考えられる.詳細な成分分析によって,種内多様性に関する新たな知見が得られ,多数の新物質も単離・構造決定した.他属植物でも同様に種内多様性の大きな試料を確保したいところである.また,細胞培養の条件について,現在カルス誘導まで5~6週間を要しており,さらなる最適化を検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初計画に従い,平成27年度は成分組成の異なる野生個体から得た細胞を人工培養し,培養細胞と野生個体との産生成分の比較を行う.さらに,培養条件を変化させていった場合の成分組成を追跡し,成分組成の決定に関わる主要な因子を同定する.一方,フィールドでの試料採集および成分分析も継続し,Eupatorium属以外で種内多様性が顕著な種の探索を行う.
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