2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860071
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
田邉 宏樹 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (10415606)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸管免疫 / 樹状細胞 / 生薬エキス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複数の免疫細胞が相互にクロストークしている腸管免疫が関連する疾患においては、単一成分を用いている西洋薬よりも、多成分で構成されている生薬エキスや漢方方剤のほうが、分子標的や細胞に対して幅広いスペクトルで奏功することが考えられる。 漢方医学の概念には、「気・血・水」という3つの要素が存在し、それぞれのバランスによって健康状態が維持されている。その中で、「気」の一部は胃腸管からの栄養素の吸収であり、「気」に作用する漢方方剤を「気剤」の中には、胃腸管に作用するものも少なくない。胃腸管への作用というと、蠕動運動を回復させ、消化吸収を助けるといったような作用以外にも、腸管免疫に作用していることも十分に考えられる。 また、多くの薬剤の作用は、腸管からの吸収過程を考慮に入れなければならないが、腸管が作用の場であることから、吸収課程を考慮する必要がないため、直接細胞に添加した結果と、in vivoの結果が十分に相関するものと考えられる。 しかしながら、複数の細胞と多成分の作用を解析することは、非常に煩雑になるため、まず本研究では、単一細胞に対する生薬・漢方方剤の影響について検討し、その作用をデータベース化することを第一目標とした。また、ユニークな活性を示すエキスについては、その活性本体の同定を試みることも視野に入れている。最終的には共培養系を用いた複数細胞を用いた検討を実施することを目的として遂行している。単一細胞に対する作用をデータベース化することで、漢方方剤による腸管免疫への作用を予測することも可能となるばかりか、その生薬から活性成分を単離同定することで、標的の定まった治療も可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者は平成26年度において、まず樹状細胞に対する作用の検討を試みた。当初の計画では磁気細胞分離法を用いたLineage陰性細胞からの分化誘導を計画し、実際に検討を試みたが、分化の確認をフローサイトメトリーで行い、さらに遺伝子発現量を検討するために必要な細胞数と、100種類以上の生薬エキスを評価することを考えると、骨髄細胞から分画なしに分化する系を用いて検討することとした。評価項目としては、MHC class2抗原とCD11c抗原に対する蛍光抗体を用いたフローサイトメトリーによる分化度合いの確認と、樹状細胞の免疫機能に関与する遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により検討することとした。当初の予定では、随時エキスの評価を行う予定であったが、今現在は先行で実施した5生薬にとどまっている。しかしながら、評価項目は定まったので、今後残りの生薬エキスについて順次検討を進める予定である。 一方、T細胞に対する検討についても、マウス脾臓細胞から磁気細胞分離法を用いてNaïve T細胞を調製し、種々のサイトカインを用いた細胞分化(制御性T細胞、Th17細胞及びTh1細胞)とその分化に対する生薬エキスの評価を行う予定でいたが、樹状細胞の評価系構築に時間がかかり着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当初予定していた、樹状細胞に対する生薬エキスの評価並びにT細胞分化の評価系の構築まで、研究を進めることができなかった。しかしながら、樹状細胞の解析については、分化の方法並びに評価項目は定まったので、今後残りの生薬エキスについて順次検討を進める予定である。データを蓄積しながら、ユニークな活性が認められた生薬エキスに関しては、その活性本体を天然物化学的手法により同定する計画である。 一方、T細胞については、3種類の分化を別々に実施するのでは、樹状細胞の場合と同じように多くの時間を要することが考えられる。そこで、評価系の変更を考えている。実際にはin vivoの系になるが、漢方方剤(気剤を中心に)を1週間胃内強制投与し、脾臓組織や腸管のリンパ組織(腸間膜リンパ節やパイエル板)に存在するT細胞の種類を、蛍光標識抗体を用いた多重染色し、フローサイトメトリーで確認する方法に変更する予定である。この方法によりT細胞の3種類の分化を一度で検討することが可能となり、時間的な短縮が望めるものと考えるが、まだフローサイトメーターを用いた解析方法が確立できていないため、まずは解析方法の確立を行う。 T細胞の解析方法が確立し、in vivoの実験を遂行できるようになった後に、3つ目の細胞である肥満細胞の検討に着手する予定である。骨髄由来肥満細胞の分化には、1か月以上の期間が必要であることから、種が異なってしまうが、RBL-2H3細胞を用いて実験を行う計画でいる。RBL-2H3細胞に関しては、抗原抗体反応による脱顆粒反応を実施した経験はあるが、Mcp-1及び2の発現やエイコサノイドの測定は実施したことがないので、まずは測定系の検討を行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、磁気細胞分画法を用いる計画でいたが、細胞収量の問題から、骨髄細胞からの直接分化誘導系に変更したため、その分磁気細胞分画法で使用する抗体の購入が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、そのほとんどが、物品費であることから、平成27年度も物品費として使用し、遅れている樹状細胞のデータ収集や動物実験費用として用いる予定である。
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