2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26860074
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
堤 広之 福山大学, 薬学部, 講師 (00461301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不斉認識 / エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCg) / X線結晶構造解析 / NMR / ジケトピペラジン / プロプラノロール |
Outline of Annual Research Achievements |
温かいお茶が冷えると生じる沈殿やにごりはクリーミングダウン現象として、お茶本来の外観や風味を損なうことで問題になっている。この現象は、お茶の主要成分である茶ガレート型カテキン類 エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCg)がカフェインと錯体形成することが原因とされているが、これを模倣すれば、EGCgは様々な化合物を捕捉し、さらにC2とC3が不斉炭素であることから不斉を認識するツールにも応用できるのではないかと考え研究を行ってきた。また、現在でも多くの医薬品はラセミ体として販売されているが、サリドマイド薬害からもわかるように、キラル医薬品への移行が望まれている。H26年度は、EGCgがジケトピペラジンCyclo(Pro-Gly)の不斉を認識すること明らかにしたが、H27年度は、EGCgの医薬品光学分割剤への応用を見据え、基礎研究として通常ラセミ体の医薬品として用いられているβ遮断薬 プロプラノロールに注目し、EGCgの不斉認識能について検討した。EGCgと(R)-、(S)-プロプラノロール重水溶液の1H NMRを測定したところ、(R)-、(S)-プロプラノロールの2位のプロトンシグナルでシフト値が異なっていた。これはEGCgにより形成される疎水性不斉空間に(R)-、(S)-プロプラノロールが取り込まれ錯体形成したことを示唆しており、このことからEGCgはプロプラノロールの不斉を認識していることが明らかになった。また、NOE測定の結果より、(R)-プロプラノロールは10位の水酸基の酸素原子と2位の水素原子が近い位置に存在するために、(S)-プロプラノロールの2位の水素原子とは分離して低磁場にシグナルが出現したものと考えている。 現段階ではプロプラノロールの不斉認識のみとなったが、EGCgは修飾していくことにより様々な化合物に対応する有用な光学分割剤になることが期待される。
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Research Products
(9 results)