2014 Fiscal Year Research-status Report
腸管上皮バリアの回復に焦点をあてた新規炎症性腸疾患治療法の開発
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26860078
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡利 彰浩 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80452465)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / クローディン / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性炎症性腸疾患は、「腸管上皮バリアの破綻」を主徴とし、腸管内から腸粘膜へ抗原物質が非特異的に流入することにより、粘膜免疫を常時活性化させてしまう未だ原因不明の難病である。本申請課題では、腸管上皮のバリア機能を担うclaudin(CL)、およびバリア機能制御に関わるMyosin light-chain kinase (MLCK)に着目し、これらの分子を制御する「CLバリア強化分子」および「MLCK活性抑制分子」を開発することで、「腸管上皮バリアの機能回復」というこれまでにない治療法を検証することにより、新たな難治性炎症性腸疾患治療戦略の構築を試みる。 既存のCLバリア評価系は、ヒト腸管モデル細胞系を用いたロースループット評価系しか存在しない。そこで我々は、腸管上皮バリア機能を担うCL-4のプロモーター領域を利用したレポーターアッセイ系により、ハイスループットCL-4発現モニタリングツール(アッセイに1~2日、最大384穴プレートを使用可能)を開発した。H26年度は本ツールを腸管細胞におけるCL-4 modulatorスクリーニングツールとなるよう改良した。また、炎症性腸疾患において発現変動が認められるCL-2, CL-5においても発現モニタリングツールを作製した。さらに、MLCK活性制御分子が炎症性サイトカインによるバリア機能低下を回復させる作用があることを明らかにし、その作用機序としてtight junction (TJ) assemblyの促進作用があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、独自の腸管バリア制御研究基盤を有効活用することで、破綻した腸管バリア(CLバリアおよびMLCKが制御するTJバリア)の正常化を目的とした新たな炎症性腸疾患治療戦略の検証を試みるものであり、当該申請課題遂行のためH26年度は、(1) 腸管上皮細胞におけるCL-4 modulatorスクリーニングシステムの構築、(2) CL-2, -5 modulator スクリーニングシステムの構築、(3) MLCK活性制御分子によるバリア機能回復作用の解析を行い、以下のようにおおむね順調に計画が遂行できた。 (1) これまでに構築したCL-4レポーターシステムは乳腺上皮細胞において構築したシステムであり、腸管バリア制御物質をスクリーニングするシステムとしては適していなかった。そこで、当該システムを腸管上皮細胞に応用するため、ヒト腸管上皮細胞を用いたアッセイ系へと構築し直し、腸管バリア制御活性が期待できるCL-4 modulator検索のためのシステムへと改良した。 (2) 腸管上皮バリア機能担うCLファミリー分子であるCL-2, -5の機能制御因子をスクリーニングするため、CL-2, -5のレポーターシステムを構築した。 (3) 独自に同定したMLCK活性制御分子によるバリア機能制御活性を調べた結果、炎症性サイトカインが誘導するバリア低下を回復させる作用、TJ assembly促進作用があることを見出した。 以上の結果から、当初の計画が遂行できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、計画していたCL-2, -4, -5レポーターシステムの構築、MLCKのバリア機能回復作用を明らかにした。H27年度は構築したレポーターシステムを用い、各種CL modulatorのスクリーニングおよびMLCK制御分子の作用機序の解明を行う。 (1) 作製したCL-2, -4, -5レポーターシステムを利用し、各種CL modulatorのスクリーングを行う。その後、ヒト腸管上皮細胞層モデルとして汎用されているCaco-2細胞単層膜培養系を利用し、同定したCL-2, -4, -5 modulator候補分子による腸管上皮バリア制御活性およびTJ関連タンパク質の発現変動確認を行うことでCL-2, -4, -5 modulatorを同定する。さらに、ヒト腸管上皮細胞層にバリア機能の低下を誘導する炎症性サイトカイン (TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6等)を単独もしくは併用して作用させたin vitro炎症性腸疾患モデルを利用し、CL-2, -4, -5 modulatorおよびMLCK活性抑制分子を単独もしくは併用利用した際の腸管上皮バリア回復作用を検証する。 (2) デキストラン硫酸ナトリウム、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸、オキサゾロン等を用いて作製した炎症性腸疾患モデルマウスを用い、(1) の検討において腸管上皮バリア機能を効果的に回復させた分子を単独もしくは併用投与した際の炎症性腸疾患治療効果および予防効果を検証する。 (3) H26年度に引き続きMLCK活性制御分子の作用機序を解析することにより、効果的かつ特異性の高いMLCK活性抑制分子の開発に繋げる予定である。
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[Journal Article] Development of an anti-claudin-3 and -4 bispecific monoclonal antibody for cancer diagnosis and therapy.2014
Author(s)
Li X., Iida M., Tada M., Watari A., Kawahigashi Y., Kimura Y., Yamashita T., Ishii-Watabe A., Uno T., Fukasawa M., Kuniyasu H., Yagi K., Kondoh M.
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Journal Title
J Pharmacol Exp Ther
Volume: 351
Pages: 206-213
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Anti-human claudin-1 monoclonal antbodies as anti-Hepatitis C Virus agents.2014
Author(s)
M. Iida, M. Yamashita, S. Nagase, M. Tada, Y. Shirasago, M. Fukasawa, A. Watari, A. Ishii-Watabe, K. Yagi, M. Kondoh
Organizer
Antibody Engineering & Therapeutics 2014
Place of Presentation
Huntington Beach, CA, U.S.A.
Year and Date
2014-12-07 – 2014-12-11
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[Presentation] Development of a Novel Bispecific Anti-Claudin Antibody and its Anti-Tumor Activity2014
Author(s)
Y. Kimura, X. Li, M. Iida, M. Tada, A. Watabe-Ishii, M. Fukasawa, Y. Kawahigashi, A. Watari, K. Yagi, M. Kondoh
Organizer
Antibody Engineering & Therapeutics 2014
Place of Presentation
Huntington Beach, CA, U.S.A.
Year and Date
2014-12-07 – 2014-12-11
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