2015 Fiscal Year Annual Research Report
運動負荷やNSAIDsの服用による食物抗原の吸収と食物アレルギー発症への影響解析
Project/Area Number |
26860105
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
横大路 智治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (70389120)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食物アレルゲン / 消化管吸収 / 非ステロイド性抗炎症薬 / 運動負荷 / 感作 / エンドサイトーシス / 細胞間隙輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動負荷やアスピリン (ASP) などの非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の服用は食物アレルゲンの消化管吸収を増加させ、食物依存性運動誘発アナフィラキシー (FDEIA) の症状を誘発する。しかし、これらの因子がどのように食物アレルゲンの消化管吸収を増加させるのかは明らかでない。また、運動負荷やNSAIDsによる食物アレルゲンの吸収増加はアレルギー感作率を増強させることが予測されるが、そのような報告はない。本研究では、食物アレルゲン (卵白アルブミン、OVA) の消化管吸収と感作におよぼす運動負荷とASPの影響について解明することを試みた。非感作ラットの消化管におけるOVAの吸収特性について検討した結果、OVAの吸収にクラスリン介在性エンドサイトーシスと細胞間隙輸送が関与することが明らかとなった。また、ASPはOVAの細胞間隙輸送を増加させることにより、消化管吸収を増加させることが明らかとなった。感作ラットを用いた検討により、OVAに感作した際には非感作時よりも細胞間隙を介したOVAの消化管吸収が増加すること、ASP処置時にはOVAの細胞間隙輸送がさらに増加し、より重篤なアナフィラキシー症状を惹起することが明らかとなった。一方、クロモグリク酸ナトリウムを処置した際にはOVAの吸収や症状の誘発が抑制されることから、OVA吸収の増加にマスト細胞が関与することが示唆された。さらに、OVA経口感作モデルにおいて、ASPを処置した群ではコントロール群と比べ、高いOVA特異的IgE抗体価を示した。以上の結果は、ASPが臨床的に服用する量でOVAの消化管吸収を増加させ、かつOVAの経口感作を増加させることを示すものである。今後、運動負荷による影響についても解明したいと考えている。これらの結果は、FDEIAの病態解明や予防法・治療法の開発に有用な知見となると考える。
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