• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2015 Fiscal Year Research-status Report

バルプロ酸による放射線誘発口腔粘膜炎軽減作用の検討

Research Project

Project/Area Number 26860106
Research InstitutionEhime University

Principal Investigator

田中 亮裕  愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50527562)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords放射線 / 口腔粘膜炎 / バルプロ酸
Outline of Annual Research Achievements

ハムスターのチークポーチにX線30Gyを単回照射することにより、放射線誘発口腔粘膜炎モデルの作製を行った。本年度はこれまでの全身投与による検討に加え、局所投与での検討を行った。バルプロ酸ナトリウムおよびHDAC阻害活性を有しないバルプロ酸のアナログであるバルプロマイドを放射線照射当日より連日頬袋内へ投与した。投与量はいずれも30 mg/site とし、溶媒にはヒドロキシプロピルセルロースを用いた。バルプロ酸ナトリウムの投与により粘膜炎スコアは軽減し、総スコアおよびスコア3以上の日数の割合を有意に改善した。
これらの作用はバルプロマイドでは見られなかったことから、バルプロ酸ナトリウムによる口腔粘膜炎改善作用はHDAC阻害作用によるものであることが明らかとなった。頬袋内のバルプロ酸ナトリウムは1時間以内に最高濃度に到達し、投与8時間後においても持続していた。また、反対側の頬袋からはほとんど検出されなかったことから、全身循環による影響は少ないと考えられる。さらに、バルプロ酸ナトリウム投与により放射線照射による抗腫瘍効果に悪影響が出ないことを確認するために、ヒト扁平上皮がん細胞(SAS, HSC2, HSC3, HSC4)を用いて評価した。バルプロ酸ナトリウム濃度については0.5mM~10mMの濃度で基礎検討を行い、濃度は1mMおよび5mMに設定した。扁平上皮がん細胞に放射線照射(2, 4, 6, 8および10Gy)を行い、バルプロ酸ナトリウム1nMおよび5mM添加時の細胞生存率を検討したところ、バルプロ酸ナトリウムはいずれの細胞株においても濃度依存的に放射線増感作用を示した。
以上より、バルプロ酸ナトリウムは腫瘍細胞に対して悪影響を及ぼすことなく放射線誘発口内炎を軽減する可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では全身投与を主体に計画していたが、臨床応用を見据えた際に安全性および局所での有効性も検証する必要があると考え、ハムスターを用いた放射線誘発口腔粘膜炎モデルでバルプロ酸ナトリウムの局所(頬袋内)投与による有用性を評価した。バルプロマイドは効果を示さなかったことから、口腔粘膜炎改善作用はHDAC阻害作用によるものであることを強く裏付ける結果が得られた。実際にHDAC阻害薬は抗炎症作用や細胞分化促進作用を示すことが報告されており、前年度の検討で得られたTGF-β抑制作用やβ-cateninの発現量増加作用が粘膜炎の軽減に関与していると考えられる。バルプロ酸ナトリウムが局所投与で粘膜から良好に吸収され、全身循環に影響しないことは、安全性の観点から今後臨床応用を進めていく上でも有用である。今回、溶媒にはヒドロキシプロピルセルロースを用いたが、臨床応用する際には粘膜への滞留性や使用感および味のマスキングも考慮した工夫が必要となることも想定される。培養細胞を用いた悪性腫瘍に対するバルプロ酸ナトリウムの影響についての検討では、腫瘍を増悪することなくむしろ放射線増感作用を示す結果が得られた。このことは放射線照射による粘膜炎を軽減しつつ患者の予後を改善する可能性を示唆している。実際にバルプロ酸ナトリウムは抗悪性腫瘍作用を示すという報告が数多くあり、今回の我々の結果もこれらを支持する形となった。
動物実験および培養細胞を用いた評価はおおむね順調に進展していると考えられ、今後は臨床応用を目指して検討を実施していく見込みである。

Strategy for Future Research Activity

自主臨床試験による臨床応用を目指す。当院倫理委員会による承認を得たのちに、頭頸部放射線療法を行う診療科(主に歯科口腔外科)の協力を経て臨床試験を実施する。頭頸部がん患者におけるバルプロ酸ナトリウムの使用経験が少ないことから、有効性確認試験の前段階として安全性試験の実施を予定している。副作用の確認としては血液学的検査(赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン)、血液生化学的検査(AST、ALT, γGTP, LDH, 総ビリルビン、ナトリウム、クレアチニン)、バルプロ酸ナトリウム血中濃度の検査を実施する。全身投与の場合、文献上は15mg/kg~50mg/kgまで様々な用量が報告されているが、まずは低用量で投与を開始し安全性を確認する。副作用等がみられなければ増量し、目標血中濃度(40μg/mL~120μg/mL)の範囲内で増量を試みる。口腔粘膜炎は放射線治療終了後も2~3週間程度持続するため、投与期間は放射線治療開始前日から、放射線治療終了1か月後までとする。口腔粘膜炎に対して作用があると考えられる半夏瀉心湯、アルギン酸ナトリウム(商品名:アルロイドGなど)、ポラプレジンク(商品名:プロマックD錠など)、ステロイド含有口腔用剤(デキサルチン、ケナログなど)は、バルプロ酸ナトリウム投与開始日から投与終了時まで、併用禁止とする。
基礎実験において最も有効かつ安全と想定される投与量・投与法を選択し、書面による患者の同意を得たうえで実施する。無作為化対照比較試験にて評価を行い、評価の指標はCTCAE version4.0に基づく口腔粘膜炎のグレード分類を用いる。加えて、抗腫瘍効果への影響を全生存率および無増悪生存期間等にて評価する。

Causes of Carryover

当初の計画では全身投与を主体に計画していたが、臨床応用を見据えた際に安全性および局所での有効性を評価することに変更したため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

マウスやハムスターでの組織学的検討を中心に進めていく。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] がん放射線療法によって誘発される口腔粘膜炎の病態と治療に関するアプローチ2015

    • Author(s)
      渡邉真一,濟川聡美,田中亮裕,荒木博陽
    • Organizer
      第24回創薬・薬理フォーラム
    • Place of Presentation
      岡山大学鹿田キャンパス(岡山県岡山市)
    • Year and Date
      2015-12-20 – 2015-12-20
  • [Presentation] がん化学療法・放射線治療によって誘発される口内炎に対する治療薬の探索2015

    • Author(s)
      渡邉真一
    • Organizer
      第25回日本医療薬学会年会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • Year and Date
      2015-11-21 – 2015-11-21

URL: 

Published: 2017-01-06  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi