2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860115
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
西 弘二 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00398249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膵癌細胞 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、膵癌細胞に対する脂質代謝阻害剤の抗癌効果を網羅的に評価し、膵癌細胞における脂質代謝メカニズムを明らかにすることで、膵癌治療における新たな治療標的を同定し臨床への応用を目指すことを目的として研究を行った。 脂質代謝阻害剤には、①脂肪酸合成阻害剤として、脂肪酸合成酵素阻害剤(セルレニン、イルガサン)およびAcetyl-CoA carboxylase(ACC)阻害剤(TOFA)、②PPAR作動薬として、PPARα作動薬(ベザフィブラート、フェノフィブラート)およびPPARγ作動薬(ロシグリタゾン、トログリタゾン)、③コレステロール合成阻害剤として、HMG-CoA還元酵素阻害剤(シンバスタチン、プラバスタチン)、④中性脂肪合成阻害剤として、Diacylglycerol acyltransferase-1(DGAT1)阻害剤(A922500)を用いた。また、ヒト膵癌細胞株にはMia-Paca2およびPANC1を用いた。 細胞増殖におよぼす各阻害剤の影響を調べるために、MTS assayを行った結果、いずれの阻害剤も細胞増殖を有意に抑制したものの、その中でもTOFAは強力な細胞増殖抑制効果を示し、次いで、セルレニン、イルガサンが中程度の効果を示した。一方、フェノフィブラート、トログリタゾン、A922500の効果はやや弱く、ベザフィブラート、ロシグリタゾンにおいてはその効果は非常に低いものであった。これらの結果から、脂質代謝阻害剤の中でも特に脂肪酸合成酵素阻害剤が他の阻害剤と比べて強い細胞増殖抑制効果を示していることが分かった。 この結果をもとにTOFAの細胞増殖抑制メカニズムを調べるためにアポトーシスアッセイを行ったが、TOFAによるアポトーシスは観察されなかったため、他のメカニズムの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種脂質代謝阻害剤を用いて、膵癌細胞株に対する増殖抑制効果を網羅的に検討したところ、特に脂肪酸合成酵素阻害剤に強い効果が観察されたため、脂質代謝阻害の標的パスウェイを絞ることが出来た。その結果、今後は、脂肪酸合成酵素阻害に的を絞り、その阻害剤(セルレニン、イルガサン、TOFA)を用いて細胞増殖抑制メカニズムを検討することが可能になった。 このような点から、現在までに順調に研究計画が進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究結果から、膵癌細胞の増殖を抑制するための最も効果的な脂質代謝経路は脂肪酸合成経路であることが示唆された。そのため、今後は、脂肪酸合成酵素がどのように細胞の増殖を抑制しているのか、細胞増殖シグナル伝達系、細胞周期、アポトーシス、ネクローシスまたはオートファジーなど様々な観点から検討していく予定である。 さらに、ヒト正常膵臓細胞株との比較を行うことにより、正常細胞と癌細胞の脂質代謝阻害剤の影響の違いについても検討し、より癌細胞に効果的な標的を検討する。
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