2014 Fiscal Year Research-status Report
トランスグルタミナーゼを標的とした糖尿病性腎症治療薬の開発
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26860118
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
水野 智博 名城大学, 薬学部, 助教 (40711669)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ2 / 終末糖化産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスグルタミナーゼ2(TG2)は、生体内に広範に存在する酵素であり、蛋白質間のグルタミン残基とリジン残基との間にイソペプチド結合を形成させ、架橋化反応を触媒する。近年、糖尿病性腎症の発症・進展に関与することが報告されているが、糖尿病性腎症の原因物質である終末糖化産物(AGE)とTG2の関連は不明であった。TG2とAGEの関連性を明らかにするため、本研究を実施した。 ヒト尿細管細胞における、AGEおよびAGEコレステロール結合凝集ヒトアルブミン(ACH)刺激を行ったところ、AGEおよびACH刺激によって、TG2のmRNA発現が用量および経時的に増加した。発現増加量について、AGE、ACH間に差は認められなかった。一方、ヒトメサンギウム細胞では、AGE、ACHによるTG2の発現変化は認められなかった。ヒト尿細管細胞では、タンパクレベルでのTG2発現増加も確認された。 AGEは終末糖化産物受容体(RAGE)に結合することで、細胞内のNF-κbの活性を増大させることから、TG2の発現増加にNF-κbが関与していると考え、NF-κbに対する阻害薬(BAY-7085)を用いた検討を行った。NF-κb活性阻害下では、AGE暴露によるTG2のmRNA発現増加は認められず、タンパクレベルでも同様の結果が得られた。 以上の結果から、AGE暴露によりヒト尿細管細胞におけるTG2発現が増加し、TG2はNF-κbを解して増加していることが示された。本研究成果は、第57回日本腎臓学会および日本薬学会第135回年会にて発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
終末糖化産物受容体(RAGE)ノックアウト株の作成を試みたが、想定以上の予算を計上する必要がある。siRNAを用いたノックダウンに方法を変更したため、想定よりも若干遅れている。ただし、AGEによるTG2の発現増加に対して、NF-κbの関与を裏付けるデータも得られており、この成果は想定以上である。
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Strategy for Future Research Activity |
siRNAを用いたノックダウン終末糖化産物受容体(RAGE)を行うことで、AGE-RAGE結合によるTG2発現増加経路にAGE-RAGE結合が関与していることを証明する。 AGEによるIKκbおよびNF-κbのリン酸化についても検討を行い、TG2の発現にNF-κbがどのように関与しているか検討を行う。 上記所見を踏まえた上で、臨床検体の解析および新規TG2阻害薬の有用性について、検討していく。
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Causes of Carryover |
学会発表に要した旅費が想定より安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度予定している学会発表用の旅費に計上する。
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