2015 Fiscal Year Research-status Report
一酸化炭素結合ヘモグロビン小胞体の多機能型蘇生剤としての有用性評価
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26860121
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
田口 和明 崇城大学, 薬学部, 助教 (90621912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一酸化炭素 / 肺 / ヘモグロビン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一酸化炭素結合型ヘモグロビン小胞体 (CO-HbV) が、未だに有効な治療法が確立していない輸血後の二次的な全身障害の予防効果を兼ね備えた革新的な新規蘇生剤としての可能性を評価することを目的とする。しかしながら、輸血関連急性肺傷害に代表されるように、輸血により最も影響を受けやすい臓器である肺へのHbV輸血後の二次的な影響は未だ明らかになっていない。そこで本年度は、HbV輸血の肺に対する影響を保存赤血球濃厚液(PRBC)と比較検討した。 まず、ラットから採取した血液からPRBCを作製し、0 日保存または28 日保存したものを、それぞれ新鮮PRBC(PRBC-0),保存PRBC(PRBC-28)として使用した。HbV は製造後1 年経過したものを用いた。これら3種の輸液を用い、出血性ショックモデルラットを蘇生した結果、輸血6 時間後までの生存率は、PRBC-28群<PRBC-0群<HbV 群の順であった。気管支肺胞洗浄液のエバンスブルー漏出度及びタンパク濃度と肺Wet/Dry 重量比は,PRBC-28 群においてPRBC-0 群と比較して増加したが,HbV 群ではPRBC-0群と同程度であった。肺組織ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色及び8-hydroxy-2-deoxyguanosine(8-OHdG) 染色においては,PRBC-28 群でMPO と8-OHdG の肺への蓄積が観察されたが、PRBC-0群及びHbV群ではこれらの集積は確認されなかった。そのため、肺への好中球集積と酸化ストレスが肺障害に関与する可能性が示唆された。以上より、HbV は出血性ショック時に起こり得るTRALI の惹起を抑制すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階の研究計画の通りに実験を行えているが、当初申請段階の「CO-HbV の臓器保護効果を伴う蘇生剤としての有用性評価」に対して未着手である。平成28年度に、CO-HbVを用いた輸血後の多臓器不全への影響に関する検討を実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
CO-HbV の多臓器保護効果を伴う蘇生剤としての有用性を評価する。評価対象臓器は、腎臓・肝臓・肺・脾臓・膵臓・腸とする。CO-HbVの有効性は、生化学パラメータ、臓器切片による臓器傷害性、血中サイトカインなどで評価する。必要時にはその他の染色 (免疫染色など) を実施し、保護効果のメカニズムの解明などにも取り組む。さらに、良好な結果を示す臓器があれば、大量出血に伴う臓器障害だけではなく、その他の要因に起因する臓器傷害に対するCO-HbVの治療薬としての可能性も探求していく予定である。
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Causes of Carryover |
検討予定である「CO-HbV の臓器保護効果を伴う蘇生剤としての有用性評価」を未着手のため、評価に必要なサイトカイン用ELISAキットなどの比較的高価な消耗品の購入や生化学パラメータ測定に予定していた外注を平成27年度に行わなかった。そのため、支出額が当初の予定より少なくなったものの、これらは平成28年度に検討予定であるため補助事業期間内での繰越金の使用及び研究の完了に影響は無い。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度への繰越金額は、ELISAキットや外注(生化学パラメータ)に使用予定。
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Research Products
(5 results)