2014 Fiscal Year Research-status Report
胸腺上皮細胞異常による自己免疫病の免疫組織学的解析
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26860138
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
沢登 祥史 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40525052)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / 免疫染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、まず当該研究を投稿するために前年度までの知見に加えた追加実験として、免疫多重染色でわかっていた胸腺上皮細胞の二つの新規サブセット(mTEC1, mTEC2)をフローサイトメトリー上で測定し、細胞接着分子の一種であり、mTECにおいては機能性とも相関する発現を示すclaudin3/4のmTEC1, mTEC2上での発現を免疫染色で測定した。しかるのち、当該研究のそれまでの知見を投稿、発表した(PLoS One. 2014 Oct 21;9(10):e109995. doi: 10.1371/journal.pone.0109995. eCollection 2014.)。 その後、それまでは免疫多重染色で新規抗体ED18/ED21により染色した映像を目視することにより判断していたmTEC1, mTEC2を、定量的に解析するため、Keyence社製蛍光顕微鏡BZ-9000および解析アプリケーションにより顕微鏡像の画素を抽出解析した。シクロスポリンA投与ラットおよび通常ラットの胸腺を比較したところ、シクロスポリンA投与ラットではmTEC1の数が有意に低下していることが確認された。これは第43回日本免疫学会学術集会(2014年12月10日-12日、京都)にて発表した。 ラットとマウスで得られた知見をヒトにも拡大するため、本学呼吸器外科と共同研究を行い、手術時にヒト胸腺サンプルの提供を受けた。ヒト組織はラット・マウスに比べ包埋・薄切を行うのが難しく、条件検討に労力が費やされたが、適切な条件を割り出し、ラット・マウス組織の解析に用いられる抗体の多くでヒト組織が染色できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、ラット・マウスにおいて胸腺上皮細胞に複数の亜集団が発見されたという、これまでの知見を論文としてまとめ、国際誌に発表することができた。さらに画像解析で亜集団の存在比を定量的に解析し、亜集団をヒト胸腺にて探索するという新規の知見へと研究は発展しつつある。 当初予定としていたautoGVHDによる検討は、現在検討続行中である。画像解析やヒト胸腺における検討を進めて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
mTEC1はMHC IIやautoimmune regulator (AIRE) といった分子の発現が多く、T細胞を選別、生産するためにmTEC2と比べて特に重要な胸腺上皮細胞亜集団であると思われる。2014年免疫学会総会で、我々はシクロスポリンA投与時にはmTEC1が特に減少することを報告した。さらに我々は、シクロスポリンA投与ラットでは実際に胸腺のT細胞新生と末梢リンパ節のT細胞のターンオーバーが低下することと、制御性T細胞が胸腺、末梢の双方で減少することを確かめている(未発表データ)。これらの知見から、シクロスポリンA投与ラットで見られるautoGVHDは、“mTEC1を減少させT細胞選別能力が低下した胸腺から自己応答性のT細胞が供給される”、“制御性T細胞の減少により自己応答性T細胞が抑制されなくなる”の二つの原因のどちらかもしくは双方に引き起こされると考えられる。我々はシクロスポリンA投与ラットと通常ラットの通常T細胞と制御性T細胞を別々に磁気ソーティングで精製し、混合リンパ球試験を用いて、これらを検討する予定である。 ヒト胸腺の染色については、包埋・薄切で検討が必要だったものの、安定して薄切・染色できる条件を割り出している。今後さらに検体数を増やし、多重染色を行うことにより、ヒトでもマウス・ラットと同様のmTEC1/mTEC2の存在があるのかを確認できることが期待される。 さらに、マウスにおいてはこれまでmTECの成熟段階におけるMHC IIの発現強度や共刺激分子の発現パターンの変化に関して多くの知見がつまれている。ED18/ED21の染色パターンの相違によって定義された我々のmTEC1, mTEC2という亜集団が、mTECの成熟段階の相違に該当するのか、それとも全く新しい亜集団となるのかは興味深く、我々はラット・マウス・ヒトの3つで共刺激分子の発現パターンとmTEC1, mTEC2の関連について調査する予定である。
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Causes of Carryover |
26年度末に、研究の進行上組織内のアポトーシスを観察する必要が生じ、染色キット(Trevigen 4810-30-K TACS 2 TdT Kit, HRP-DAB)を購入する予定があったのだが、約58000円と残金をやや上回ったため、必要性の低い試薬などで残金を使い切るよりも、次年度に残金を繰り越して購入したほうが能率的だと判断したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通りアポトーシス染色・検出キットを購入し使用する。
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