2014 Fiscal Year Research-status Report
肝線維化部位に集積する筋線維芽細胞による線維形成の分子機構に関する基礎的研究
Project/Area Number |
26860140
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小川 智弘 近畿大学, 工学部, 講師 (70448752)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 星細胞 / インテグリン / コラーゲン / 線維化 / 肝臓 / オステオポンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、食生活の欧米化に伴い、日本における患者数が増加している非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や、C型肝炎やB型肝炎などのウイルス性肝炎は、肝線維化を経て肝硬変や肝癌を発症し、死亡するケースも少なくない。本研究は肝線維化のメカニズムを明らかにする目的で、オステオポンチン陽性細胞に着目した研究を行っている。近年、肝線維化をもたらす要因として、線維化部位に集積する細胞(オステオポンチン陽性筋線維芽細胞)の存在が非常に重要な役割を担っていることが報告された。そこで、我々は線維肝からオステオポンチン陽性筋線維芽細胞の分離および培養を試み、その細胞の特性を明らかにしたいと考えている。我々は、まず初めにオステオポンチンの作用機序を目的でヒト星細胞株LX-2細胞にヒト組み換えオステオポンチンを作用させた。この細胞はオステオポンチン受容体インテグリンα5, αV, β1, β3, β5およびCD44を発現していることを確認され、オステオポンチンの作用によりコラーゲン産生が抑制された。さらに、マウスにCCl4を投与した肝線維化モデルおよびメチオニン・コリン欠乏食を投与したNASHモデルにおいて、正常肝に比べオステオポンチンの発現が増加傾向にあり、肝線維化の進展や星細胞の活性化に伴い発現が上昇することが明らかとなった。今後、オステオポンチン陽性細胞を肝臓から分離・培養し、その作用機序を明らかにしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では初年度にオステオポンチン陽性細胞の分離を確立する予定であったが、正常肝臓でオステオポンチンを発現している細胞が非常に少なかったため、当初の予定より研究手法の改善が必要であると思われた。そのため、障害肝からのオステオポンチン陽性細胞の分離または正常肝から分離・培養した細胞の中から、オステオポンチン細胞のみを分離するなどの工夫が必要であると考えられた。これらと並行して、ヒト由来の培養肝星細胞を使ってオステオポンチンの生理学的機能を明らかにしたいと考えている。オステオポンチンの肝臓での機能を明らかにすることが、肝線維化の進展や線維形成のメカニズムの解明に繋げたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、正常肝や障害肝から細胞を分離する技術の確立を目指している。オステオポンチン陽性細胞の割合は非常に少ないため、効率よく細胞を分離する技術が求められる。肝臓内でオステオポンチンを発現している細胞はマクロファージなどの炎症性細胞や星細胞、胆管細胞などが報告されている。これらの細胞の中から、線維化に関連すると思われるオステオポンチン陽性の筋線芽細胞を分離・培養し、その細胞特性を明らかにしたいと考えている。具体的にはこの細胞のコラーゲン産生や遊走性、増殖能を解析し、肝細胞や他の類洞壁細胞との相互作用をin vitroで解析する。この細胞の線維形成に関わる分子制御機構を明らかにすることで、肝線維化の治療法の開発および創薬研究につながることが期待される。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、現在、培養細胞を使ってオステオポンチンの生理学的機能を明らかにしようとしているが、現在使用中の大型機器の使用不良により機器修理または新規購入が必要とされたため、研究費の次年度への繰越を行っている。また、当初の研究計画より遅れているため、次年度の動物実験でのマウス購入、消耗品購入、学会発表及び論文発表投稿料で使用する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用予定額:1886367円 (内訳 ゲル撮影装置購入:160万円、マウス購入:10万円、消耗品購入:10万円、学会発表:8万円)
|