2014 Fiscal Year Research-status Report
ATP及びその受容体を標的とした新規光老化発症機構の探索
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26860147
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
河野 鮎美 北里大学, 薬学部, 助教 (30631634)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | UVA / 光老化 / ケラチノサイト / ATP / P2受容体 / ヘミチャネル / 情報伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外線A波(UVA)曝露による皮膚老化におけるATP及びP2受容体の関与を明らかとするため、はじめにUVA曝露ケラチノサイトからのATP放出機構の解析を行った。続いて、細胞老化促進作用を持つとされる炎症性サイトカインIL-6産生に対するP2受容体阻害剤の抑制効果の検討を行った。 ヒト表皮ケラチノサイト由来HaCaT細胞に細胞死を伴わないような低線量のUVAを照射したところ、照射直後をピークとして培養上清中の細胞外ATP濃度が上昇した。このATP放出はP2X7受容体アンタゴニストやヘミチャネル阻害剤により抑制された。また、ヘミチャネル(Connexin43, Pannexin1)、P2X7受容体の発現をウェスタンブロット及び蛍光免疫染色にて確認した。これらの事から、UVA照射によりATPはP2X7受容体及びヘミチャネルを介して細胞外へ放出されることが示唆された。さらに、UVA誘導性IL-6産生はP2X7受容体アンタゴニスト、ヘミチャネル阻害剤、ATP分解酵素前処置により顕著に抑制された。以上の検討より、UVA照射によりヘミチャネルやP2X7受容体を介して細胞外へ放出されたATPは、IL-6産生誘導に寄与することが明らかとなった。正常ヒト表皮角化細胞を用いた場合も、同様の結果が得られている。 さらにHaCaT細胞においては、放出されたATPがP2Y11受容体とP2Y13受容体を活性化させ、それぞれ細胞内Ca2+濃度の上昇、Aktの活性化を介してIL-6産生を誘導することが明らかとなった。本研究成果については、現在学術論文へ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究実施計画に従って実験を行い、一定の成果が得られている。また、次年度の研究計画に挙げていたUVA誘発性ケラチノサイト分化異常へのATPの関与の検討についても一部行った。以上のことから、当該年度分の研究計画はおおむね順調に遂行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
サイトカイン産生の他、角化異常やコラーゲン量減少にも着目して以下の研究を行う。ケラチノサイトにUVAを照射し一定時間培養した後、1) IL-8産生を測定する。2) ケラチノサイト増殖マーカー・分化マーカー発現変化を検出する。3)上清を非照射繊維芽細胞にトランスファーし、繊維芽細胞におけるコラゲナーゼ・エラスターゼ活性を測定する。これらの事象において、予めケラチノサイトに各種ATP放出阻害剤・P2受容体アンタゴニスト・IL-6中和抗体を処置していた場合の影響を検討する。 更に光老化モデルマウスを作製し、皮膚抽出物のサイトカイン産生量やしわ形成を指標として、各P2受容体アンタゴニストの塗布効果を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、この金額の中で使用するよりは次年度の研究費に組み込んで使用する方がより適切であると考えたため生じた。平成27年度請求額とあわせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な試薬(培地、抗体、阻害薬等)、器具(ピペットマン、ガラス器具等)、動物等の購入に使用する。また、学術論文投稿などの研究成果の発表にも使用する予定である。
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