2014 Fiscal Year Research-status Report
中枢時計のin vivo計測による概日リズムのシステム的理解
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26860156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 大輔 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30634224)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 概日リズム / 視交叉上核 / 発光イメージング / 蛍光イメージング / 多電極ディッシュ / in vivo 計測 / 多機能同時計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類における概日リズムを、個体を含めた一つのシステムとして理解するために、概日時計の中枢である視交叉上核内の遺伝子発現リズムと、そこからの出力系を同時に計測し、細胞から個体に至るまでの概日リズム形成メカニズムを明らかにする目的で研究を行った。 本年度はex vivo, in vivoにおける多機能同時計測システムを構築した。Ex vivoにおいては、時計遺伝子Per2のタンパク質にルシフェラーゼを結合させたレポーター (PER2::LUC) マウスの視交叉上核スライスを作成し、アデノ随伴ウイルスを用いてGCaMP6をスライス表層に発現させた。さらにこの培養視交叉上核をメンブレンごと切り出し、多電極ディッシュ上に培養した。これにより遺伝子、細胞内カルシウム、神経発火の同時機能計測に成功した。これらの位相関係はカルシウム、神経発火、Per2の順に認められこれまでの知見と一致していた。 In vivoにおいてはPER2::LUCマウス以外に、他の時計遺伝子Per1あるいはBmal1のプロモーター下流にルシフェラーゼcDNAが挿入されたレポーターマウス(Per1-luc, Bmal1-ELuc)を用い、視交叉上核あるいは嗅球に光ファイバーを挿入し逆単面から得られる発光輝度を光電子増倍管にて計測した。また同時に赤外線センサーを用いてマウスの自発行動量を計測することに成功した。このシステムを用いて、自由行動下マウス脳内の遺伝子発現計測に連続して3週間以上行う事に成功した。In vivoでみとめられたそれぞれのレポーターマウスの視交叉上核から得られた発光ピーク位相は、ex vivoで見られるピーク位相に比べ2-3h位相後退していた。またin vivoでの嗅球のPER2::LUCリズムのピーク位相は主観的夜の中心付近に認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進めるにあたりex vivo, in vivo多機能同時計測の構築がもっとも重要なステップである。本年度は視交叉上核の初代培養を用いて遺伝子、細胞内カルシウム濃度、神経発火の同時計測システムを立ち上げることができた。また光ファイバーを用いた自由行動下マウスの脳内の時計遺伝子発現計測と、赤外線センサーを用いた自発行動量の同時計測はこれまで技術的に困難であるため成功例がなかったが、今回我々のグループがこの手法を構築した点において十分な達成度が得られたと考えている。概日時計の中枢である視交叉上核以外の脳部位における遺伝子発現計測にも成功し、視交叉上核とその他脳部位の相互作用を無麻酔・無拘束マウスを用いて長期に評価する事ができた点もその理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した、ex vivo, in vivo多機能計測システムを用い、視交叉上核の遺伝子発現、細胞活性の操作を行い、時計遺伝子とその出力系の関係を明らかにする。Ex vivoでは薬理的に細胞間の情報伝達を阻害すること、またノックアウトマウスを用い遺伝的に細胞の状態を操作し、その際に見られる遺伝子、細胞内カルシウム、神経活動の時空間パターンを定量化する。In vivoでは光ファイバーを用いた自由行動下マウス脳内の遺伝子発現計測システムを用い、視交叉上核特異的に細胞間連絡を阻害したり、遺伝子機能を欠損させたりした際の脳内遺伝子発現プロファイルと行動リズムへの出力系を評価する。また蛍光プローブを用いた細胞内カルシウム濃度の変化を自由行動下マウスの視交叉上核から計測するシステムを構築し、in vivoにおける細胞内カルシウムの動的変化とその生理的意義について明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度はex vivo, in vivoにおける多機能同時計測を構築することを第一目標として研究を進めてきた。本年度の前半はほとんど機器のセットアップで時間を要したため、大きな支出がなかった。しかしその後おおむね計測システムについては完成し、後半は動物実験を含めデータが順調に得られた。今後細胞機能を制御した際の神経ネットワークの再構築、行動への出力系の評価を行う実験へ進めていく。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度構築した多機能同時計測システムを用い、アデノ随伴ウイルスを用い細胞種特異的な遺伝子操作をex vivo, in vivoで行いその際の遺伝子、細胞内カルシウム、神経発火、行動の関連性を明らかにしていく。薬理遺伝学的、光遺伝学的なツールを導入する予定でおり、それらのシステムのセットアップ費用、アデノ随伴ウイルスの準備費用、動物実験のための費用などを見込んでいる。また論文作成にあたり、校正費用、論文投稿費用も含まれ、次年度はより大きな予算が必要である。
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Research Products
(14 results)