2014 Fiscal Year Research-status Report
光遺伝学を用いた慢性筋痛モデル開発と病態機構の解明
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26860158
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 功栄 名古屋大学, 環境医学研究所, 研究員 (00579592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性筋痛症 / 筋筋膜性疼痛症候群 / トリガーポイント / 光遺伝学 / チャネルロドプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床的な慢性筋痛症に特徴的な筋の一部に限局した痛覚過敏と筋硬結(筋組織内に生じる硬いしこり)を作り出すため、光遺伝学を駆使し、チャネルロドプシン2(ChR2)の筋内異所性発現によりChR2 が発現する筋細胞のみを選択的に収縮させ、従来とは異なる、より臨床所見に近い動物モデルの開発とメカニズム解明を目指し実験を開始した。 1. 最適なアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターの検討:最も効率よく遺伝子導入可能なウィルスのSerotypeを調べるためにSerotype 1, 9, 10, DJを用いて検討実験を実施。Serotype 9と10を用いたAAVベクターを投与した個体では、筋細胞上にChR2の発現が確認でき、筋の上からの光刺激でわずかながら筋収縮が肉眼で確認できた。 2. 最適な投与量と投与時期の検討:AAVベクターの投与量を5, 10, 15, 40 ulに振って最適な投与量を調べた結果、前脛骨筋に対しては10 ulの投与量が最も効率的にChR2の発現を誘導できることを確認。また、投与後1, 2, 3週で発現量を比較したところ、1週よりも2, 3週後の方がより発現量が多かった。2, 3週では大きな差は見られなかった。 筋・筋膜性疼痛の発現メカニズムを包括的に調べる為、遅発性筋痛モデルを用いた実験も同時進行で実施した。その結果、遅発性筋痛を生じる伸張性収縮運動の伸張可動域と伸張スピードが遅発性筋痛発現において重要であることが確認された。また、疼痛への関与が指摘されていた組織損傷は、疼痛発現において必須ではなく、筋において発現増加する神経成長因子が重要な役割を果たすことが明らかとなった。現在、上記実験内容を論文発表準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
①行動実験により正しく筋痛を評価するには非侵襲的な処置が望ましい。そのため、皮膚の上からの光照射にて筋痛を生じるほどの筋収縮を誘発する必要がある。現在、骨格筋内において、皮膚上からの光照射で筋痛を生じ得るほどの強い筋収縮を生じさせられるだけの十分なChR2の発現量が得られていないためプロトコールの検討が必要となっている。 ②骨格筋へのウィルス導入時に、一部領域に筋壊死が生じる現象が観察されている。この辺りは研究実績の概要にも記載しておくとよい。遺伝子導入時に生じる筋壊死は、その後に実施する筋痛評価に影響を及ぼす憂慮があるため好ましくない。そのため、筋壊死を生じさせないプロトコールの検討が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋への低侵襲で効率的な遺伝子導入を実現するために、レクトロポレーションによる遺伝子導入を検討中である。また、CAG、シナプシンプロモータなど、CMV以外のプロモータの導入も検討中である。
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Causes of Carryover |
本年度使用した実験動物数及び購入した実験試薬・実験器具が想定よりも少なかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、実験動物及び実験試薬・実験器具の購入に使用予定である。また、エレクトロポレーションによる遺伝子導入を検討中のため、新たな実験機材の購入に使用予定である。
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