2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860159
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 佳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60548543)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体温調節 / 感染 / プロスタグランジン |
Outline of Annual Research Achievements |
感染時には、発熱をはじめ、倦怠感や食欲不振などの中枢性の症状が現れるが、その神経メカニズムは明らかになっていない。感染によってプロスタグランジンE2が脳内で産生されるが、本研究では、発熱中枢(視索前野)のプロスタグランジンEP3受容体発現ニューロン(EP3ニューロン)が、発熱に付随して生じる様々な症状の発現に関与するという仮説を立て、検証を進めている。これまで、視索前野のEP3ニューロンに特異的にレポーター遺伝子を発現する遺伝子組み換えラットを作製し、解析を進めてきた。この遺伝子組み換えラットを用いて、神経終末まで運ばれる蛍光蛋白質を視索前野のEP3ニューロン特異的に発現させることにより、そのニューロン群の全投射先を明らかにすることに成功し、神経伝達の脳内標的部位を明らかにすることができた。このEP3ニューロンの視索前野局所での生理学的機能を調べるために、スライスパッチクランプ法を用いてEP3ニューロンの活動を測定した。視索前野は神経細胞が非常に脆弱なため、安定して活動記録を取ることが非常に難しいが、スライス作製の手法や条件を改良することで改善しつつあり、興味深い知見が得られつつある。しかしながら、視索前野は様々な性質のニューロンが混在するため、活動記録の例数を増やし、温度感受性やプロスタグランジンE2への反応性も含め、慎重に検討しているところである。また、脳スライスや個体レベルの実験によって、視索前野のEP3ニューロンを特異的に活性化あるいは抑制し、神経活動の変化ならびに熱産生などの個体の生理反応を追っている。また、発熱に付随する食欲不振の症状の中枢メカニズムを明らかにするため、摂食調節部位を探索し、その作用機構の解析もあわせて進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視索前野のニューロンは他の脳領域と異なり、非常に脆弱なため、スライス電気生理実験の条件検討には非常に苦労した。しかしながら、実験手法と条件を詳細に検討することで、プロスタグランジンE2への反応や、温度感受性を含めた記録を取り、データを収集することができるようになってきた。また、光遺伝学の方法を用いて、スライスで視索前野のEP3ニューロン特異的に刺激し、神経活動の変化を観察している。in vivoにおいても、光遺伝学を用いてEP3ニューロン特異的に神経活動を調節し、個体レベルの反応解析を進めている。さらに、感染に伴う食欲不振を理解する上で不可欠である、摂食調節への作用メカニズムを解明するための解析を進めている。こうした解析から重要な所見が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
スライスパッチクランプ実験については、光刺激システム及び脳組織スライスの状態の安定化を目指して改良を進めつつ、活動記録の例数を増やす。この実験により、体温(脳組織温度)変化や、感染時のプロスタグランジンE2の作用を受けた時に、視索前野のEP3ニューロンが局所でどのように働くのかが明らかになると考える。これまでに引き続き、in vivoで光遺伝学的手法等を用いて視索前野のEP3ニューロン特異的にコントロールし、生理的条件下での役割を明確にする。本研究のこれまでの解析で得た視索前野のEP3ニューロンの全投射先の情報とあわせて、摂食調節機構へ作用する神経メカニズムを明らかにすることで、感染に伴って起こる食欲不振などの中枢メカニズムを明らかとする。
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Causes of Carryover |
平成27年4月の所属機関移動に伴い、平成26年度に参加予定であった国際学会や、いくつかの国内の学会に参加できなかった。そのため、これらの学会参加のための旅費を28年度まで持ち越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、本研究の成果を報告し、情報交換を行なうため、国際学会や国内の学会へ精力的に参加する。そのため、学会参加費用(旅費)ならびに研究成果を報告するための論文の投稿費用に使用する。また、最終年度のため、研究を完遂するために必要な実験消耗品を購入するための費用、遺伝子組み換え動物の飼育費用などにも使用する。
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