2014 Fiscal Year Research-status Report
高分子量型リポカリン2の糖鎖配列と産生メカニズムの同定
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26860173
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
藤原 葉子 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (50392494)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖蛋白質 / 糖鎖 / 疾患モデル / 薬剤性腎症 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、薬剤性腎障害モデルマウスの解析過程で、血清中では検出されない高分子量型のlipocalin2 (Lcn2) が尿中に出現することに着目し、その出現条件と特性を明らかにすることでバイオマーカーとしての有用性を見出すことを目的としている。本年度はlipopolysaccharide (LPS) の腹腔内投与による全身性炎症モデルを用いて、25 kDaの分子量を示す高分子量型のLcn2の出現を解析した。 LPS投与マウスの肺、肝臓、腎臓、尿管、膀胱、血清、随時尿を採取し、Lcn2の誘導をウエスタンブロッティングにて解析したところ、25 kDaのLcn2は尿中のみに明確に出現した。一方、血清中に見られる23 kDaのLcn2は採取した組織、血清、尿すべてにおいて検出された。即ち、尿中Lcn2のみ23 kDaと25 kDa の分子量の異なる2種類が存在することが示された。尿中Lcn2の各種糖鎖分解酵素に対する感受性を調べると、尿中のLcn2はPNGase F処理により2つのLcn2は糖鎖付加を受けない20 kDaのLcn2となり、Endoglycosidase H処理へは抵抗性を示した。尿中25 kDaのLcn2は、Sialidaseに対して感受性をもつことが分かった。血清、肺、腎臓のLcn2は尿中Lcn2と同様の感受性を示したが、肝臓、尿管はEndoglycosidase Hに感受性を示し、Sialidaseで分解されなかった。これらLPS投与マウスの解析から、尿中25 kDaのLcn2は複合型であり、Lcn2は組織により異なる糖鎖付加を受けることが示された。 また、両側尿管閉塞モデルを作成し、腎盂尿に蓄積した尿のLcn2を検出すると、23 kDaと25 kDaの両方が出現することが明らかとなり、25 kDaのLcn2は膀胱以外の組織から産生されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は薬剤性腎障害以外のモデル動物の作成と尿中Lcn2の出現パターンを調べることを計画し、本年度はLPSによる炎症モデルと尿管結紮による尿管閉塞モデルマウスを解析した。LPS投与マウスでは、尿中25 kDaのLcn2と末梢組織中Lcn2の分子量の比較を行うことができた。LPS投与モデルについては、次年度検討予定であったマウスの遺伝的背景の差異や性差についても検討し、いずれも尿中Lcn2は2種類の異なる形態を示した。予定していた組織学的解析では、肺、肝臓、尿管でのLcn2免疫染色の条件を検討でき、今後の解析へ有用となると考えられる。よって、研究はほぼ計画していた通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に沿って進める予定である。また、計画には糖鎖配列の同定を組み入れ、尿中25 kDaの産生部位の解析を進める。糖鎖側鎖の形状はウエスタンブロッティング法とレクチンブロットを組み合わせることにより調べる。糖鎖側鎖の形成に関与する糖鎖転移酵素を絞り込み、RT-PCRで発現する組織を調べる。また、薬剤性肝障害、および腎障害のモデル動物を作成し、尿中Lcn2の出現パターンと糖鎖分解酵素への感受性を調べる。これらにより、尿中Lcn2の糖鎖と障害との関連性を検討し、尿中25 kDaのLcn2が出現する条件と由来の予測を行う。以上を中心に行い、培養細胞を用いた産生メカニズムの検討へと繋げられるよう、研究を進める。
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Causes of Carryover |
本年度計画していたモデル動物作成をLPS投与モデルとし、Lcn2の出現部位を詳細に解析した。また、25 kDaの由来を絞り込む検討を優先したため、尿管閉塞モデルの作成を追加した。そのため、当初予定していたシスプラチン等、他の薬剤による臓器障害モデルの作成と解析を見送り、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はモデル動物の作成と解析、Lcn2の糖鎖配列解析を計画しており、これに関する研究に物品費予算を割り当て、使用する予定である。腎障害および肝障害等を誘発する薬物によるモデル動物作成と、モデル動物を用いた免疫染色等による組織学的解析を行う。また、尿中Lcn2の出現と糖鎖付加型について検討を行う。そのため、ウエスタンブロッティング関連試薬と装置、免疫染色関連試薬、抗体、糖鎖配列解析、動物購入維持、モデル動物作成のための各種必要物品を揃え、研究を遂行する。また、得られた結果で論文作成、受理と学会発表を目指し、その投稿と別刷り作成、旅費に係る費用を計上している。
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