2016 Fiscal Year Research-status Report
高分子量型リポカリン2の糖鎖配列と産生メカニズムの同定
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26860173
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
藤原 葉子 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (50392494)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 腎臓 / バイオマーカー / 薬物性腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、尿中には血中や腎臓とは異なる分子量のLipocalin2(LCN2)が出現する機構を明らかにし、バイオマーカーとしての有用性を見出すことを目指している。障害や炎症に迅速に反応して血中や尿中に分泌されるLCN2は、マウス血中では22kDaが検出され、同じく尿中では22kDaと24kDaの存在が確認された。これまでの研究では、lipopolysaccharide(LPS)による全身炎症モデルマウス、および片側尿管結紮(UUO)による局所炎症モデルマウスを用い、尿中LCN2の出現を調べた。その結果、LPS炎症モデルでは22kDaと24kDa、UUOマウスでは24kDaの尿中LCN2が出現する傾向にあった。この分子量の差は糖鎖の大きさの違いによるものと考えられ、LCN2は病態により異なる分子量で尿中に出現する可能性が示唆された。これら尿中LCN2由来組織の予測へ取り組むため、本年度はLcn2糖鎖配列の予測を試みた。 ノイラミニダーゼにより糖鎖末端のシアル酸を除去された24kDaのLCN2はいくつかの糖鎖切断酵素(エキソグリコシダーゼ)に反応する傾向にあったが、22kDaのLCN2はノイラミニダーゼ以外のエキソグリコシダーゼに反応を示さなかった。また、LCN2の糖鎖修飾について解析するため、細胞株を用いて検討を行った。LCN2が腎障害マーカーとして注目されていたことから、腎組織由来細胞株へマウスLCN2をトランスフェクションし、培養上清を得た。しかしながら、22kDaの糖鎖付加型のLCN2のみが得られ、24kDaのLCN2は細胞体や培養上清中いずれにも検出されなかった。従って、LCN2の由来組織や糖鎖付加と分泌に関する課題を進める上で、糖鎖切断酵素の反応条件や、糖鎖配列の違うLCN2を解析するモデルとなる培養細胞株の見直しが必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度にてマウス糖鎖配列の予測を予定であったが、酵素切断酵素の反応条件検討が必要となった。また、培養細部株を使った実験では複数種の糖鎖を付加するLCN2が得られず、尿中LCN2の由来や糖鎖付加の影響を見出す研究に遅れが生じたことから、やや遅れているという自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
糖鎖配列の同定方法を見直し、慎重に結果を検証しながら至適条件を見つける。その際、培養細胞株を可能な限り由来組織別に数種類準備する。培養細胞への形質導入によって産生されるLCN2の分子量を調べ、解析に最適なモデルを選定しながらLCN2の糖鎖の形状による由来組織の予測や、LCN2の細胞内外への局在へ与える影響について検討する。
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Causes of Carryover |
本年度はモデル動物の作成を一度中断し、培養細胞株や既に採取された動物試料の解析を中心に行った。しかし、糖鎖配列同定やモデル細胞株の選定に遅れが生じた。そのため、予定していた動物飼育維持関連費用や消耗品の購入等に余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の未使用分と合わせて、引き続き糖鎖切断酵素や、免疫染色関連試薬、消耗品、その他細胞培養関連実験の準備費用として使用する予定である。疾患モデル動物の作成は必要最低限とし、培養細胞株を中心に使用していくことを考えている。得られた成果を論文投稿関連費用として使用できるよう、予算を分配する。研究費は無駄のないように留意し、優先順位や必要性を十分に検討する。
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Research Products
(1 results)