2014 Fiscal Year Research-status Report
GATA因子が切り拓く、腎性貧血の新規創薬アプローチ
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26860179
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 寛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80635558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | GATA因子 / エリスロポエチン / 遺伝子発現制御 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎性貧血は慢性腎臓病の合併症の一つで、腎臓からのエリスロポエチン(EPO)産生量低下に起因する。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与が、現在の主要な治療方策であるが、種々の問題がありEPO製剤に替わる薬剤の開発が望まれる。近年、本来の腎EPO産生細胞以外での異所性EPO発現の抑制機構に、GATA転写因子群が関与することが報告された。本研究はGATA因子阻害を起点とした異所性のエリスロポエチン発現を誘導する化合物開発を目的とする。これまでに、GATA因子活性に応答するハイスループットスクリーニング系を構築し、東京大学オープンイノベーションセンターより恵与された化合物ライブラリー(9,600化合物)を探索し、レポーター活性を阻害する複数のヒット化合物群を単離した。当該年度は、さらなるヒット化合物の上積みを図るべく、異なる二つの化合物ライブラリー(東北大学、慶応大学より入手、計6,900化合物)を探索し、レポーター活性を阻害する新たなヒット化合物を得た。さらに、得られたヒット化合物を低酸素依存的なEPO産生能のない腎臓や肺の上皮系細胞株に暴露し、EPO発現量の変化を解析した。興味深いことに、ヒット化合物群のうち、複数の化合物が定常酸素濃度下でこれら細胞株からEPO発現を誘導した。EPO発現が誘導された一方で、低酸素応答転写因子HIFの標的遺伝子群の発現は増加しなかった。これより、これら化合物は、HIF因子を介さず定常酸素濃度下でEPO発現を誘導すると考えられる。本結果は、世界に先駆けて、低酸素依存的なEPO産生能をもたない細胞からのEPO発現誘導を実現したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に単離したヒット化合物に加えて新たなヒット化合物を得た点、そして、これらヒット化合物に異所性EPO産生を誘導する化合物が含まれる点を考慮し、概ね、順調に計画は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られたヒット化合物群の作用機序の解明に取り組む。さらに、実験動物個体にヒット化合物を投与して、個体レベルでの異所性EPO産生能を評価する。この際に、経口投与や呼吸器への噴霧投与といったより侵襲性の低い投与法を検討する。
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Causes of Carryover |
ヒット化合物件数を増やす為に化合物スクリーニングを優先し、平成26年度に予定されていた各化合物の作用機序解明等が平成27年度に先送りした。これに伴い、当該実験に係る試薬類購入も平成27年度に行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、化合物の作用機序解明に係る試薬類等を平成27年度に購入する。
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