2015 Fiscal Year Annual Research Report
GATA因子が切り拓く、腎性貧血の新規創薬アプローチ
Project/Area Number |
26860179
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 寛 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80635558)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 遺伝子発現制御 / 創薬 / 低分子化合物 / GATA因子 / エリスロポエチン |
Outline of Annual Research Achievements |
腎性貧血は、慢性腎臓病等の腎機能低下によって、腎臓からのエリスロポエチン(EPO)産生量低下に起因する疾患である。その治療には遺伝子組換えEPO製剤が使用されるが、薬価や投与方法に問題を抱えており、より安価で経口投与可能な治療薬の開発が望まれている。本研究では、GATA因子阻害を介した上皮系組織からの異所性EPO発現の誘導、というこれまでにない創薬アプローチで研究を進めてきた。 通常、EPO遺伝子は生体内の低酸素環境に応答して、腎臓EPO産生細胞(REPs)等から発現する。この、制御にはHIF転写因子群が関与する。一方、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターマウスを用いた解析から、腎臓や肺の上皮系組織においては、GATA転写因子群がEPO遺伝子のプロモーター領域に結合し、その発現を抑制していることが示唆された。しかしながら、実際にGATA因子を阻害することで、これら上皮系組織から異所性かつ低酸素刺激非依存的にEPO発現が誘導できるかは不明であった。 申請者は、これまでの解析から、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いてマウス腎集合管由来細胞株のEpoプロモーター領域内のGATA因子結合部位を欠失させることで、低酸素刺激非依存的な異所性EPO発現を誘導させることに成功した。また、GATA因子阻害を指標としたハイスループットスクリーニング系を樹立し、GATA因子阻害作用をもつ複数の低分子化合物を単離した。これら低分子化合物は、腎臓や肺上皮由来の培養細胞株だけでなく、マウス個体への投与で、内在性EPO遺伝子の発現を誘導した。さらに、これら上皮系細胞から発現誘導されたEPOタンパク質が、赤血球造血の活性化能を有することを示した。申請者らが明らかにしたこれらの成果は、経口投与可能な腎性貧血の治療薬開発に供する、新しい創薬手法を示すものである。
|
Research Products
(3 results)