2014 Fiscal Year Research-status Report
Ralシグナリングの異常による癌化・癌悪性化の解析
Project/Area Number |
26860181
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白川 龍太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50581039)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | Ral / RalGAP / 低分子量GTP結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
RalはRasファミリーの低分子量GTP結合タンパク質であり、細胞内膜輸送、アクチン細胞骨格、細胞の増殖や生存の制御など様々な機能を有している。近年の知見により、Ralの異常な活性化が細胞の癌化に寄与することが知られている。しかしながら、生体においてRalの異常活性化が癌化、癌悪性化に果たす役割については多くが明らかでない。研究代表者はRalの抑制因子であるRalGAP(Ral GTPase-activating protein)を初めて分子同定し、さらにそのノックアウトマウスを作製した。RalGAPはGAPドメインを有するαサブユニットとβサブユニットからなるヘテロ複合体であり、αサブユニットには2つのアイソフォーム(α1およびα2)が存在する。それぞれがβサブユニットと複合体を形成する(すなわちα1-β複合体およびα2-β複合体)。 本研究計画ではこれらのRalGAPノックアウトマウスの解析を通しRalシグナリングの制御異常が癌化・癌悪性化に及ぼす役割をin vivoで明らかにすることを目的としている。現在までの研究により、RalGAPα2ノックアウトマウスは化学膀胱発癌モデルにおいて筋層浸潤性の膀胱癌を多発することを見いだした。平成26年度はRalGAPα1、RalGAPα2サブユニットノックアウトマウスの解析をさらに進めるとともに、RalGAPβサブユニットのコンディショナルノックアウトマウスを作製した。 また、平成26年度は、Ralと癌に関する総説(Shirakawa et al., J Biochem, 2015)、および、肺高血圧症におけるRalの活性化について報告した(Yaoita et al., ATVB, 2014)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、RalGAPα1、RalGAPα2、RalGAPβノックアウトマウスについての解析を進めた。 RaGAPα1サブユニットノックアウトマウスは神経系、免疫系に異常を呈することを明らかにした。 RalGAPα2サブユニットノックアウトマウスは一見正常に発育する。研究代表者らは、これまでの研究により、RalGAPα2ノックアウトマウスは、尿路特異的な変異源N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine(BBN)の投与により野生型マウスには見られない高悪性度の浸潤性膀胱癌を多発することを明らかにした。これは、Ralシグナリングの異常が癌悪性化に関わることを生体を用いて示した初めての例である。 RalGAPβサブユニットノックアウトマウスは胎生致死であるため、成体を用いて解析することは不可能であった。そこで致死性を回避するためにcre-loxPシステムを用いたRalGAPβコンディショナルノックアウトマウスを作出した。α1、α2 のノックアウトマウスでは一方の欠損によりもう一方が代償性に増加していることが組織によっては観察される。したがって、αサブユニットのシングルノックアウトでは組織によっては表現系が現れない可能性があった。βサブユニットはRalGAPのGAP活性に必須であることから、βサブユニットを組織、細胞特異的に欠損させることでRalシグナリングの制御異常が及ぼす影響をより明確に解析することが可能になると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
RalGAPα1サブユニットは血球系細胞で多く発現しているため、血球細胞の分化や増殖に関わっている可能性がある。RalGAPα1ホモマウス胎児肝より造血幹細胞を単離し野生型マウスに移植することで血球系細胞のみでα1サブユニットを欠失したマウスを作出し、α1の欠損が血球系の分化、増殖に及ぼす影響をin vivoで解析する。 また、RalGAPα2サブユニットは膀胱以外にも肺や大腸に強く発現するため、これらの組織において自然発癌が見られるかどうかを検討するとともに、urethane、azoxymethane(AOM)/デキストラン硫酸(DSS)などの変異源、炎症物質投与による肺癌、大腸癌の発生、進展を解析する。 RalGAPβサブユニットのノックアウトマウスは胎生致死であるため、成体におけるRalGAPβの機能を解析するためにはコンディショナルノックアウトマウスが必要となる。今後は得られたRalGAPβコンディショナルノックアウトマウスと組織特異的creトランスジェニックマウスと掛け合わせることにより、成体におけるRalGAPβサブユニットの意義を解析する計画である。また、アデノcreウイルスを用い肺胞上皮細胞においてRalGAPβサブユニットを欠失させ、その影響を解析していく。さらに、K-RasノックインマウスやPTEN等の癌抑制遺伝子ノックアウトマウスと掛け合わせることにより癌悪性化への寄与を生体を用いて解析する計画である。
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
[Journal Article] Platelets are highly activated in patients of chronic thromboembolic pulmonary hypertension2014
Author(s)
Yaoita N, Shirakawa R, Fukumoto Y, Sugimura K, Miyata S, Miura Y, Nochioka K, Miura M, Tatebe S, Aoki T, Yamamoto S, Satoh K, Kimura T, Shimokawa H, Horiuchi H
-
Journal Title
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
Volume: 34
Pages: 2486-2494
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
[Journal Article] GARNL1, a major RalGAP α subunit in skeletal muscle, regulates insulin-stimulated RalA activation and GLUT4 trafficking via interaction with 14-3-3 proteins2014
Author(s)
Chen Q, Quan C, Xie B, Chen L, Zhou S, Toth R, Campbell DG, Lu S, Shirakawa R, Horiuchi H, Li C, Yang Z, MacKintosh C, Wang HY, Chen S
-
Journal Title
Cellular Signalling
Volume: 26
Pages: 1636-1648
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-