2015 Fiscal Year Research-status Report
骨の質・量・形状変化に依存して生体応答を調節する骨由来因子の探索と解析
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26860183
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
住谷 瑛理子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50724754)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨分泌因子 / 臓器間クロストーク / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格や骨量は性別や年齢、健康状態により差異が見られることが知られている。一方、近年の研究により骨は単に身体の支持組織として働くだけでなく、液性因子を介して他組織の機能調節に関与することが示された。これらのことを併せて考えると、骨組織を構成する細胞の数や比率に違いがあれば、放出される骨分泌因子の量も変わることが予想される。そこで本研究では骨から分泌され他組織へ作用する因子を探索し、その因子が身体の機能調節に及ぼす影響を調べ、性別や年齢、健康状態等との連関を解析することを目的としている。 前年度までの検討において、マウス新生仔の頭蓋冠由来の細胞から分化誘導した骨芽細胞系細胞の培養上清中に、PC-12細胞に神経突起様の構造を誘導する活性が含まれることを見出した。さらにこの活性分子を部分精製した画分から、PC-12細胞に突起構造を誘導する活性を有するタンパク質Aを同定した。平成27年度は、タンパク質Aの生体内における機能を解析するために、タンパク質Aをコードする遺伝子Aを骨芽細胞特異的に欠損するマウスの作製を進めた。まず遺伝子Aを骨芽細胞特異的にヘテロ欠損するマウスが得られたので、大腿骨をマイクロCTにより解析したところ、骨量の減少傾向がみられた。さらに、タンパク質Aが骨の中への神経伸長に影響するかどうかを検討する為に、発生段階での骨の中への神経伸長および成体の骨の中の神経走行を免疫染色で検出するための実験系の条件検討を行い、今後遺伝子Aを骨芽細胞特異的にホモ欠損するマウスを解析する準備ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨芽細胞系細胞から分泌され、神経系に作用する可能性のある候補因子を同定し、この因子をコードする遺伝子を骨芽細胞特異的に欠損したマウスの作成が進んでいる。また、今後得られる予定の遺伝子欠損マウスに対して行う骨の中の神経を検出するための実験系を確立することができた。研究は概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた実験結果より、遺伝子Aを骨芽細胞特異的にヘテロ欠損するマウスでは骨量低下傾向があることが示唆された。今後は遺伝子Aを骨芽細胞特異的にホモ欠損するマウスを得て、骨分泌因子Aが骨の構造および骨の中への神経伸長・神経走行に及ぼす影響を調べる。またAの受容体を発現する神経線維が骨の中で検出されるかどうかについて検討する。さらに発生段階でのAの必要性および成体の骨の中の神経の維持に対する寄与についての検討の他、Aが性別や年齢、健康状態等と連関するかどうかを解析する。
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Causes of Carryover |
出産のため、当該年度中に4ヵ月間研究を中断した。中断期間中に使用しなかった助成金が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は遺伝子欠損マウスの解析を中心に行う予定なので、マウスの飼育にかかる費用(餌、床敷き、無塵衣のクリーニング代)や免疫染色実験に用いる抗体等の試薬の購入に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)