2016 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the molecular pathology of frequently-accompanied pulmonary cancer in fibrotic lung
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26860185
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
丸山 順一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30723639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺線維症 / 肺癌 / DNA損傷修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までの解析により特質性間質性肺炎(IPF)患者の線維化肺において発現亢進していることが見出された癌幹細胞マーカー遺伝子Dについて、肺癌発癌への関与をin vitro実験系を用いて検討した。結果、以下の知見を得た。
1)発癌には癌遺伝子・癌抑制遺伝子の変異が必要であり、これはDNA損傷修復機構を含むゲノム安定性維持機構の不活性化に因る部分が大きい。そこで、遺伝子Dの発現が細胞のDNA損傷修復機構に影響を及ぼすか否かを検討した。結果、遺伝子Dの強制発現は非相同末端結合・相同組換えという代表的な二種のDNA修復機構をモニターするレポーター系においていずれの活性も抑制した。また、DNA損傷依存的なBRCA1・RAD51等DNA修復タンパク質の核内foci形成が遺伝子Dの強制発現により抑制された。以上の結果より、遺伝子DがDNA損傷修復機構を抑制的に制御する可能性が示唆される。 2)マクロファージ様細胞株RAW264.7の培養上清を非小細胞肺癌由来細胞株H1299に処理すると、遺伝子Dがコードするタンパク質(以下、遺伝子D産物)の発現量が上昇した。この時、遺伝子D由来mRNA量に変化は見られなかったため、この発現量上昇はタンパク質安定化を介していると考えられる。IPF肺にはM2マクロファージが集積していることが知られていることから、本結果は集積したマクロファージから分泌される物質が肺実質細胞における遺伝子D産物の発現量上昇に寄与する可能性を示している。
昨年度までの解析結果も踏まえると、IPF肺において肺癌の併発率が高くなる分子機構の一つとして、「マクロファージ分泌物質等により肺実質細胞において遺伝子D産物の発現量上昇が起こり、その結果、癌幹細胞性誘導とDNA損傷修復機構抑制が引き起こされる」という機構の存在が示唆された。
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